第38話『イベント』
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の奥へと入っていく。それに晴登も笑顔で応えると、彼女の後へついて行った。
*
「何だろう、これを眺めてると懐かしい気分になる」
「時計のこと? おかしな反応だね、ハルト」
腕で抱えられる程の大きさの時計を見て、ふと思ったことを呟く。それは時計の見た目についてだ。
現実離れ・・・とまでは言わないが、日本離れしている光景が続くこの異世界の中、目の前の時計やその周りの時計を見ていると、やけに懐かしさを覚える。
止まることなく動き続ける秒針に、時々動きを見せる長針と短針。それらを眺めていると、ふと元の世界を偲ぶのだ。
1日いなかっただけで寂しく感じる。いわゆる、修学旅行中のホームシックだ。そんな経験ないけども。
「どうしたの? そんな悩むような顔して」
「うわぉ!」
急に晴登と時計の間に入り込んで、顔を覗いてくるユヅキ。その不意討ちに驚き、足がもつれて尻餅をついた。
「うわ、ごめん! 大丈夫?」
「いやいや、こっちこそ驚いてごめん。……ちょっと、故郷を思い出して」
「故郷?」
ハルトがポツリと洩らした単語にユヅキが反応する。
晴登はその反応を見ると、言っていいものかと一瞬迷ったが、続きを話した。
「別に隠すこともないから話すけど…俺は遠い所からきた人間なんだ」
「遠いって、どのくらい?」
「あーそれはわかんないけど…」
思い切ったカミングアウトをしてみるも、ユヅキの質問にあっさり撃沈。
簡単な話、この世界の知識については出発前に部長から聞いた限りであり、それ以上のものは持ち合わせていないのだ。
一頻り唸ってみて、出た答えはただ一つ。
「この世界には俺は存在しない…ってぐらい?」
「何それ、よくわかんない。現にハルトは目の前にいるのに」
「だよね…」
少し哲学っぽい答えを出すと、ユヅキは意味がわからず膨れっ面。
だが決して嘘ではない。この世界が地球の中にあるのなら話は別だが、“異世界”という名を地球人から付けられているならば、その名の通り異世界なのだろう。
ここは恐らく、地球ではない。
「ちなみにユヅキの出身はどこ?」
「え、ボク?」
自分の身の上話をしたら、相手のも聞きたくなるのが人間だ。
昨日のラグナの話だと、普通の人生を送ってはいないだろうと判断できるから、なお気になる。
・・・う〜ん、この理由だと少し不謹慎だな。
「気になるから聞かせてよ」
「そうだな〜」
自然な建前を使って探ると、ユヅキは首をかしげながら考える。どうやら話してはくれそうだ。
「…ボクも遠い所で生まれたかな。この王都から見て、だけど。でも、そこで
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