第38話『イベント』
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なのに、こうして昼間と変わりない光景を見ると、ここが王都なんだと改めて実感した。
元の世界でも、ここまで人がいるのは都会くらいだろう。
「おっと…早く行かないと」
ユヅキの手から解放されて自由になったからか、ついボーッとしてしまう己に喝。
目的地がどこかはわかっているが、まだ場所を明確に把握していない。だから、まだユヅキを目視できる内についていく必要がある。
向かってくる人の壁を避けながら、晴登はユヅキの後を追った。
するとすぐに、見たことのある建物の目の前に着いた。
ユヅキが何の躊躇いもなく入っていくのを見て、真似するように入る。
狭い室内の奥、ラグナはレジ台に頬杖をついて──寝ていた。
「また……」
ユヅキがポツリと呟いて、肩を竦めてレジまで歩いていく。
さて、この後の展開が何となく予想できてしまった。予め準備をすることにしよう。晴登は静かに耳を塞いだ。
「ラグナさーーん!!!!」
だが早朝からのこの大声でさえ、王都の賑わいには敵わなかった。
*
「あぁくそっ、耳が痛ぇ。いっつも言ってるだろ、もうちょい優しく起こせって」
「寝てる方が悪いっていうのも、いつも言ってますけど」
ラグナがユヅキを睨みつけながら、彼女の行動に対して不満を口にするも、正論によって一蹴される。お陰でムスッとした表情をせざるを得ないラグナだったが、ユヅキの隣に立つ晴登を見た瞬間に表情が変わった。
「お、ハルトじゃねぇか。今日はよろしくな」
「え!? あ、はい、よろしくお願いします!」
ラグナの表情の一転に多少戸惑い、慌てて返答をしてしまう。
それでもラグナは気にせず、先程の不満を忘れているかのように清々しい笑顔を見せた。
「んじゃ、ちっと早いけど準備すっか。どうせ客来ないけど」
「そんな不吉なこと言わないで下さい!」
ラグナが仕掛けた意地悪に、ユヅキがまんまと引っ掛かる。そろそろ、恒例となるのではなかろうか。
ラグナは愉快そうに笑うと、ようやく腰を上げた。
「じゃあ、ユヅキはいつも通りの仕事をハルトに教えてくれ。ハルトはそれに従ってくれたらいい」
「「わかりました……ん?」」
晴登とユヅキの返事がシンクロし、互いに顔を見合わす。
それを見たラグナは更に笑いの調子を上げ、
「はっはっは! 仲が良いこったな!」
豪快に一言。
なんだか少し照れ臭いが、別に悪いことでもないので素直に受け取っておく。ユヅキもまた同じ考えのようで、笑みを浮かべていた。
「それじゃあハルト、行こうか」
「うん」
ユヅキはその表情のまま晴登に一声かけると、店
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