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NARUTO日向ネジ短篇
【籠から開放されし忘却の鳥】
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たまま茶の間の隅の、仏壇の傍に立ち尽くしていた。縁側のふすまから僅かに、月明かりが差し込でいる。

「ネジ兄、さん……」

「──────」

 二人が呼び掛けても、ネジは背を向けたまま下向いている。

「なぁおい...、何とか言ってくれってばよ...ッ!」

 じれったくなったナルトは、ネジに近寄って肩に手を置き振り向かせる。


「……?! お前、泣いて・・・───」


「…………ッ」

 ネジは、頬に涙を伝わせ、悲痛な面持ちで声もなく泣いていた。

「ネジ兄さん...、ここへ来て、何か思い出せたの……?」


「わか...らない……。やはり、思い出せない…ッ。けど“この人”は、俺にとって……大切、な・・・───」


 後は言葉にならず、ネジは顔を覆い静かに啜り泣く。

そんなネジを、ヒナタは優しく抱き包んだ。

ナルトは、どうすればいいか迷ったが、とりあえず頭を軽く撫でてやった。



────それから、どれくらいの時が経ったろう。

ネジは横になった姿勢でヒナタに膝枕され、泣き疲れたのか、すうすう眠っていた。

「お仏壇に……、小さめの遺影があるでしょう。ネジ兄さんの……お父上のヒザシ様。ネジ兄さんは、お父上が大好きだったから───ううん、今でも大切に想ってる。その遺影を...、病室に持って行ってあげようかとも思ったけど、私が...ネジ兄さんのお父上の遺影をこの家から安易に持ち出すのは良くないって、思って……」

 ネジとヒナタがまだ互いに幼い頃、“日向事件”の起こる前、父親が稽古の後に少しでも一緒に遊んでくれたりした事をネジがとても嬉しそうに話すのを、ヒナタは今でもよく覚えていてそれを懐かしむと同時に、胸がぎゅっと締め付けられる思いだった。


「親父さんの写真見ても、ハッキリとは思い出せねぇみたいだな……。けどやっぱ、完全に忘れちまってるわけじゃねぇ。“大切な想い出”っつーのは、心の奥に刻まれてるもんなんだ」

「ネジ兄さんにとって辛い思い出も……、刻まれてるんだよね。───私はどこかで、このまま記憶を戻さなくてもいいんじゃないかって思ってたりするの。だって私は……ネジ兄さんにとって大切なお父上を、奪ってしまったから。……でも兄さんは、『───父は自らの“自由な意志”で、里の仲間や家族を守る為に命を賭した。だから……あなたのせいじゃない』って、言ってくれた事があったけれど」

「いい思い出も辛い思い出も全部含めて、“大切”なんだってばよ。このまま思い出せなくても、ネジにとって“大切な想い出”は、忘れてたって心の奥で消えやしねぇんだ、きっと。それに……、オレ達が覚えていてやれるだろ? ネジとの過ごした時間を全部、な」

「うん……そうだね。色んな事
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