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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百九十二話 罪の深い女
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中で呟いている。キルヒアイスも同様だ。
だが俺に言わせれば、フリードリヒ四世に後一年寿命があれば、死んでいたのはラインハルトとキルヒアイスのほうだったと思う。何故なら帝国の上層部はラインハルトを危険視する人間で溢れていたからだ。
イゼルローン要塞失陥後の事だが、帝国軍三長官とリヒテンラーデ侯が話をするシーンがある。それを見ると彼らはラインハルトの地位が上がる事を酷く警戒している。
そしてバラ園での皇帝とリヒテンラーデ侯の会話、さらに同盟軍侵攻が分かったときのリヒテンラーデ侯とゲルラッハ子爵の遣り取り……。
リヒテンラーデ侯、ゲルラッハ子爵、そして帝国軍三長官、彼らの間ではラインハルトは消耗品だった。同盟が健在なうちは利用するがその後は排除……。アムリッツア会戦での大勝利は十分に排除のきっかけになっただろう。
ラインハルトを排除する口実はあったのだ。他でもない、焦土作戦だ。あの作戦で辺境星域二億人は飢餓地獄に陥った。それがどれ程酷かったかはリップシュタット戦役時に辺境星域で僅か三ヶ月未満の間に六十回以上の会戦が起きた事でも分かる。
当然だが辺境星域の貴族達の怒りも激しかったはずだ。ラインハルトを処断すれば、辺境星域の住民、貴族達、その両方の歓心を得ることが出来る。政府に対して不信感を持っただろう辺境星域に対してラインハルトを処断することでその罪をラインハルト個人の物に摩り替える……。
カストロプ公を切り捨てることで国内の不満を和らげた帝国ならラインハルトを切り捨てる事も容易かっただろう。
勝利の凱旋から気がつけば処刑場ということだ。
“ただ勝てば良いという勝ち方は宇宙艦隊を率いるものに相応しからず”
その一言でラインハルトから宇宙艦隊を剥奪できただろう。その後は言うまでも無い。
滑稽なのはラインハルトがそのあたりをまるで理解していない事だ。あげくの果てに後二年などと言っている。当時の自分を取り巻く政治状況が全く見えていなかったとしか思えない。だから多くの人間がこの強運に気付かない。
皇帝フリードリヒ四世が死んだ事で全てが変わった。帝国はいつ内乱が起きてもおかしくない状況になった。リヒテンラーデ侯はラインハルトの排除を一旦中止し、手を組む事でブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯と戦う事を選択した。つまりラインハルトの皇帝への道が開けたのだ。
俺はこれまで皇帝フリードリヒ四世の死は自然死だと思っていた。ラインハルトは何と強運なのだろうと。だが今回のキルヒアイスが使おうとした薬で考えを変えた。あれは自然死じゃない。
オーベルシュタインはラインハルト達が危ういという事に気付いていたのだ。だから手を打った。先ず、同盟に対して大勝しラインハルトの軍事能力を見せ付ける。
第二にフリードリヒ四
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