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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百九十二話 罪の深い女
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て行く時とは全く違う、まるで狩をする猛獣のように荒々しい雰囲気を周囲に撒き散らしている。
「リヒテンラーデ侯はどうしました?」
「それが」
指揮官席に座る司令長官に問いかけられ、ワルトハイム参謀長が面目無さげにスクリーンを見た。司令長官もスクリーンを見る、厳しい表情だ。戦いの最中でもこんな顔は見た事が無い。戦う男の顔だ。
「ヴァレンシュタインです。重大な要件でリヒテンラーデ侯に相談が有ります。侯を呼んでください」
『しかし、もうこの時間……』
「叩き起こしてください」
司令長官の声に皆が驚いた。執事、艦橋の皆、スクリーンに映る司令官達……。
「この件で不祥事が発生した場合は侯と卿に責めを負ってもらいます、死にたくなかったら侯を叩き起こしなさい」
司令長官の厳しい表情と言葉に執事は真っ青になった。
『……』
「早く決めなさい、侯を呼ぶのか、それとも死ぬのか」
『す、すこしお待ちください。今主人を呼びます』
「馬鹿が……」
執事が慌てて消えるのと司令長官が吐き捨てるのが一緒だった。司令長官はかなり苛立っている。余程の大事が起きたのだろう。皆顔を見合わせた。
「申し訳ありません、侯に緊急で相談しなければならない事が出来ました。そのまま待っていただけますか」
『それは構いませんが、よろしいのですか? 我々が聞いても』
「構いません。むしろその方が良いでしょう」
司令長官はロイエンタール提督と話し終えると右手で左腕を軽く叩きながら俯き加減に視線を伏せた。そのまま左腕を叩き続ける。艦橋は痛いほどに緊張している。皆司令長官を窺うように見るが司令長官の様子は変わらない。左腕を叩き続けるだけだ。そして一つ大きく息を吐いた。
『何のようじゃ、ヴァレンシュタイン』
リヒテンラーデ侯がガウン姿でスクリーンに現れたのは執事が消えてから五分ほど立ってからだった。司令長官が腕を叩くのを止めた。
「先程キルヒアイス准将を捕らえました」
『その事は昨夜聞いた』
リヒテンラーデ侯が皮肉そうな口調で笑った。寝ている所を起されて機嫌が良くない様だが司令長官は気にした様子も無く話を続けた。
「キルヒアイス准将は私に薬を飲ませようとしました、これです」
司令長官の手には小さなカプセルが有る。皆の視線がその薬に集中した。
『それで』
「この薬は心臓発作に良く似た症状を引き起こすそうです。それに一旦体内に取り込まれると検出するのは非常に困難だとか。他殺を疑われる事は先ずない……」
『何が言いたい』
「グリューネワルト伯爵夫人の元にもこれが有る可能性が有ります」
「そ、そんな、痛!」
抗議しようとした私の肩を強い力がつかんだ。まるで肩を万力で握り潰すかのようだ。
リューネブルク中将だった。中将
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