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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百九十二話 罪の深い女
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ずが無い、有ってはいけない事だ……。

「……閣下、閣下!」
「……なんです、リューネブルク中将」
「通信が入っています」

通信が入っている? 確かにそうだ、呼び出し音が鳴っている。気付かなかったのか……。そんな目で見るな、リューネブルク。俺は大丈夫だ……。

「ヴァレンシュタインです」
「ワルトハイムです。艦隊司令官達に連絡が取れました。艦橋へ御出でください」

“人間など追い詰められればどんな事でもするということかもしれない”
“俺は甘いのだろう”
……考えすぎだ、そんな事はありえない。神経質になっているだけだ。

「ワルトハイム参謀長」
「はっ」
「……リヒテンラーデ侯に連絡を取ってください」
スクリーンに映っているワルトハイムの顔が驚愕に満ちている。俺も同感だ、多分何処か頭がおかしくなっているのだろう。

「閣下、この時間に国務尚書を」
時間? それがどうした、たかだか夜中の二時半じゃないか。寝てるだろうが死んではいない、叩き起こせ、話は出来る。

「構いません、叩き起こして下さい。ヴァレンシュタインが緊急の要件で話したがっていると……」
「はっ」

もう後へは退けんな。全くなんでこんな馬鹿な事ばかり考え付くのか……、多分馬鹿だからだろう。度し難い馬鹿だ。
「リューネブルク中将、行きますよ」
「はっ」

リューネブルクが嬉しそうに答えた。こいつ、なんだってそんな嬉しそうな顔をしてるんだ? 俺が厄介ごとに巻き込まれる度にいつも嬉しそうな顔をする。全くろくでもない奴だ、何で俺はこいつを傍においておくんだろう、さっぱり分からん……。



帝国暦 488年  1月 2日  帝国軍総旗艦ロキ マグダレーナ・フォン・ヴェストパーレ


艦橋は混乱している。艦隊司令官達との連絡がついたと思ったら今度は国務尚書リヒテンラーデ侯を呼べと言われたのだ、当然だろう。ワルトハイム参謀長が国務尚書の執事と話しをしているがなかなか埒が明かない。

「何度も同じことを言わせないで頂きたい。ヴァレンシュタイン司令長官が至急侯に連絡を取りたいと言っておられるのだ」
『そうは言われても、元帥閣下の御姿も見えない状況では』

さっきからずっとこの調子だ。ワルトハイム参謀長は苛立ち、国務尚書の執事は何処か勝ち誇った表情をしている。国務尚書の勢威をこちらに思い知らせたいと思っているのかもしれない。この夜中に主人を起せなど何を考えているのか、そんなところだろう。

艦橋に司令長官が入ってきた。厳しい表情だ、足早に歩いてくる。そして司令長官の後ろには周囲に鋭い視線を送りながらリューネブルク中将がついている。

それだけで何かが起こったことが分かった。艦橋の空気が混乱から緊張に切り替わる。二人は此処を出
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