20話目 湖岸の戦場(後)
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いったん途切れた。
すこし間をおいてから、エレナがグレイに話しかける。
「グレイ。アタシ、あらためてアナタをライバルだと思うことにするわ」
「あらためて……? 前からオレのことライバルだと思ってたのか?」
「あら、初めてバトルした時に宣言したと思うけど」
「んん……? そうだっけ? まあいいや。オレもエレナのことはライバルだと思ってる。なんだよ、両想いだったのか!」
「そうね。グレイと両想いになれて、とても嬉しいわ」
「ちょっ! 大声で両想いとか言うなよ! 誤解されるだろ」
「アナタが先に言ったんでしょう!?」
「いや、それはそうだが……まさかエレナが冗談を即座に返してくるとは思わなくてな……」
「アナタが冗談ばかり言うせいで耐性がついたのよ。まあ当然よね。アナタとは両想いだったんですもの!」
「ぐっ……! そうだよな、オレたち……両想い……だもんな!」
エレナが躊躇なく両想いという言葉を使うのに対し、グレイには若干の恥ずかしさがある。この言葉の戦いは不利だと判断したグレイが、話題を無理やりすり替える。
「まあ、あれだエレナ。いつでもバトルの挑戦は受けてやるよ。ライバルだからな」
しかし、その言葉にエレナが反応した。
「いつでも……? じゃあ今からお願いしてもいいのかしら?」
「いやいや! 今からはさすがに冗談だろ! もう少し期間を開けろよ!」
「決して冗談ではないわ。アナタに負けた悔しさで今夜は眠れないと思うわ。この悔しさ、アナタに勝って今すぐ発散したいの」
「オレに勝てる前提かよ、おい! さっき、『アナタに負けてよかったわ』とか言ってただろ? 自分の言葉に責任もてよ!」
「それは、アナタに負けたことで自分の過ちに気づけて良かったという意味よ。負けることが嬉しいなんて意味では全くないわ」
「……姐さん、撫でるか? 心が落ち着くぜ?」
「遠慮しておくわ」
バトルをやるのかやらないのか揉め始めるエレナとグレイ。
彼らは、ポケモンを理解することで強さを引き出す方法を選んだ。それが正しい方法なのか、あるいは間違っている方法なのか、その答えを知る者はいない。
ポケモントレーナーにとって、ポケモンとは何なのか?
崇めるべき神のような存在、畏怖すべき恐怖の対象、そのような人間よりも上位の存在なのだろうか?
あるいは、心を通わせる友達、運命を共にする相棒、利害関係が一致しただけの他者。そのような対等な関係なのだろうか?
それとも、一方的に命令ができる道具や奴隷なのだろうか?
ポケモンとは何か? その問いは、ポケモントレーナーにとって永遠の問いかけであり、その問いに対する絶対的な答えを知る者は誰もいない。
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