【いたずらなお月様】
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くれるネジに対し、申し訳ない気持ちとほっとしたのとでヒナタは言葉をうまく紡げない。
「ご、ごめんなさっ……ネジ兄さん、私...の、為に…っ。でも、生きてくれていて、よかった……」
「謝られても、困るのですが……。それに俺なら、何ともありませんよ。月を、眺めていただけですし」
「う、うん……そうだ、よね。ごめんなさい、困らせてしまって…。邪魔、しちゃったよね」
勝手に泣いた自分が情けなくなったヒナタは涙を拭い、ネジの顔をまともに見れずに下向く。
「ヒナタ様、下を向いていては勿体無い。───今宵は、月がとても綺麗ですよ」
その優しい声音に誘われるように見上げると、満月の月明かりが雲一つない夜空を煌々と照らし出す静寂の中、月は普段より大きく美しく思えた。
……ふと横に居るネジに目を向けると、満月を見上げて月明かりに目を細め、微笑を浮かべている姿に美しさすら覚え、ヒナタは従兄を恍惚と見つめる。
その視線に気づいたネジは、少し困ったような微笑を浮かべたままヒナタに静かな口調で話しかける。
「もしや……、俺に関しておかしな夢でも見ましたか? 満月の夜は、妙な夢を見やすいようですからね」
「え……? あ、もしかして、ネジ兄さんも怖い夢を見たから眠れなくなって、こんな夜更けに外の川辺に……?」
「いえ…、単純に寝つけなくて気晴らしに月夜を眺めに来ただけです。───ヒナタ様は、怖い夢を見たのですね。俺が夢であなたに怖い思いをさせたのなら、謝ります」
そう述べてネジは頭を下げてきたので、ヒナタは慌てて本当の事を話した。
「違うの、そういう事じゃなくて...! ネジ兄、さんが……夢の中で、私を守る為に……亡くなって、しまって」
「そうでしたか。……あなたを守って死ねるなら、分家として本望ですよ」
微笑んだままで言うネジが、ヒナタにとっては堪らなく哀しかった。
「やめて、そんな事言わないでネジ兄さん。分家とか宗家とか、どうでもいいの。兄さんが私の為に、死んでしまう必要なんてない...っ」
「───そうかもしれません。だが俺は、そう簡単に死ぬつもりは無い。あなただけでなく、生きている上で守り続けたいものが多くある。死んでしまったら、直に守れなくなりますし、他の者に任せるしかなくなりますからね」
(ネジ兄さん……)
月明かりの元の真摯な眼差しのネジに、ヒナタは安心感を覚えて微笑み返した。
「……そろそろ戻りましょうヒナタ様、身体が冷えてしまいますよ」
「あ...うん、そうだね……ふわぁ」
ヒナタは急な眠気を覚え、思わず小さくあくびをする。
「はっ、ごめんなさい...! 兄さんの前で、はしたない事を───あれ、どうした
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