飛縁魔
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ー』『きりんだー』と書きこまれていた。そしてその足元には、妙にでかい三つ編みの女の子が『わーい』みたいな恰好をして笑っている。
「……こ、これは……」
「まつるくんがつれてきた、おさかなよ。これがー、まつるくんで、これがー、結貴くん」
青い獣の下にピンク色のクレヨンでデカデカと『おさかな』と書いてある。ど、どうしよう、これこの間、奉がちょっとした誤解の果てに小梅ん家に麒麟連れて行った時の絵じゃねぇのか。何も間違ったことは描いてないのに超変な絵になっちゃってるよ!これ俺が親だったら、この子…心に変な闇を抱えてんじゃないかしら…と心配するレベルだよ!!
「あっ…ありがとう…この絵は、その…ママには見せたのかなぁ?」
「うん!ほめてくれたよ!」
……見せちゃったかー……
「そのあと、ママおしごとやめたほうがいいのかなぁって、まじめなかおでいってた!!」
―――うわぁあぁ、本当に申し訳ない。
「うむ、とても上手に描けているねぇ。麒麟の瑞獣感が良く表現されている」
俺が変な汗をこらえて姪の絵を眺めているその背後に、奴が現れた。瑞獣感なんて言葉初めて聞いたわ。
「キリンとちがう!これは、おさかな!!」
「そうだ。もうお前はこれ以上余計な事を云うな。小梅一家に激震が走ってんだよお前のせいで」
「そんなことないよねー、小梅」
「うん!げきしんてなに?」
うんーなんだろねぇー、と適当にあしらい、また新たな冒険の旅に出た小梅に気づかれないように、奉に目配せをして部屋に入れた。小梅についていく気だったらしい奉は、渋々ついてきた。
「さっきの女は、どうしたんだ」
渋々、超渋々薄い座布団に腰を降ろし、奉が肩をすくめた。
「逃がした」
「出ていってくれたのか…」
なんとも言えない安堵が緊張を溶かした。溶け過ぎてもうひと眠りしたいくらいに。しかし奉は、まだ渋い顔をしている。そんなに小梅と遊びたいのか。
「引き留めるべきだったねぇ」
……は?
「あれは飛縁魔。凶兆だ」
「凶兆?…そいつがいると悪い事が起きるってやつだろ?だったら出て行ってくれて良かったじゃないか」
「また、勘違いをしているねぇ、お前は」
奉は断りもせず煙草を取り出すと、軽く口にくわえて火をつけた。眼鏡が光を反射して分かりにくいが、多分俺を睨んでいる。
「あれはただの『兆し』。凶事を運んでくるわけではない。ただ、誰かの生活にそれとなく忍び込むだけの妖だ。美しかろ、あれ」
「ああ…綺麗な人だったな」
あの時はたまらなく厭な感じがしたが、今になってみると少し惜しい気がする。あんな凄い美人が『あなたの彼女』などと云いよってくれたというのに、俺は。
「…独り身の男にとって、そう悪い話じゃなかろ?」
「だな」
「な―――?あ、そうすね彼
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