飛縁魔
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は」
―――なんか、厭だ。
「………結貴の、彼女でしょ?」
そう囁くように云って、彼女は黒い瞳でじっと俺を覗き込んだ。
居心地が、悪い。俺は気分が悪くなって目を反らした。
「……知りません。大体どうやってここに入ったんですか」
「一緒にお酒呑んで、帰って来て…ねぇ?そうだよね、思い出して?」
彼女はしなる獣のような動作で俺の正面に回り込んで、もう一度俺と目を合わせてきた。ぐらり、と床が歪む。うわうわうわ、来たぞ眩暈が来た。ど、どうしようこの状況で俺が気を失って、ここに母さんが入って来て、俺の彼女と名乗る知らない女と爆睡中の奉を発見して、この女にいいように説明されて…あ…もう、駄目だ……
「面倒なことになったねぇ……」
倒れ込む瞬間、奉の眠そうな声が耳朶に届いた。
何故か腹が減って目が覚めた。
時計を見ると、まだ10時にもなっていない。…あれ、夢だったか?夢…だったと仮定して、妙に生々しく眩暈が残っている。少し天井が回る。…いや、酒のせいかな。階下から、ぽて、とす、ぽて、とす、と変な音が近づいてきた。そしてそっと音を立てずにドアが開く。
「おきましたね、結貴くん」
あぁ、小梅が来ているのか。小梅は最近、俺を結貴くんと呼ぶようになったのだ。小梅が俺の部屋に勝手に入り込んで剣道部の県大会で貰ったトロフィーをままごとに使おうと企んだ挙句破壊して以来(唯一のインテリアがトロフィーとかダサいのでそのうち仕舞おうと思っていたから全く構わないんだが)姉貴が『2階には上がるな』と云い聞かせてはいるらしい。が、あの好奇心の塊が、そんな言いつけを聞くはずがない。だが見つかれば叱られることは理解しているので、小声で話すのだ。
「……今日は早いな」
「ママは、『ままとも』とかいうひとと、おでかけなのです。だから小梅は、ばぁばんちの、たんけんたいなの」
―――鬼の居ぬ間に、なんとやらというわけか。小梅は可愛くまとめてもらったお団子頭をプリプリ揺らして俺のベッドに勝手によじ登ってきた。そういう事するから二階出禁になるんだぞ君は。
「きょうここに、きけんをかえりみずにきたのは、おれいのしなじなをわたす、そのためです」
お礼の品々?
「いつも、ひこうきとかしてくれてありがとう。さっきも、まつるくんがひこうきやってくれたのよ」
奉くん!?あいつやっぱり来てたのか!?ならば…さっきのは夢じゃないんだな。そしてあいつが俺の家に押しかけて仮眠をとりつつスタンバイしていたのは、小梅が来るのを嗅ぎつけていたからだな。
「あい、おみやげよ」
小梅が拙く丸めた画用紙を広げた。そこには、真っ青な胴に鱗を光らせた変な馬らしき生き物に乗った二人の棒人間みたいなものが描かれていた。そいつらから吹き出しが2つ出ていて『きりんだ
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