或る短かな後日談
一 情動
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に抱き締める。細い、細い身体。リティよりも細い身体。折れて、潰れてしまいそうな程……軽い身体。幼ささえ残る。
そんな、身体。脱色した髪、私の黒髪。彼女は、重みを。触れ合う髪と髪、頬に感じる擽ったさ、私に、預けて。
「……抱擁は、親しい仲で行うコミュニケーションと記憶している」
「ごめん。不器用なんだ。でも……親しくは、なりたい」
「……返答次第。私は……クイーンを守りたい」
目を閉じる。彼女の体の内から響く、鼓動にも似た駆動音に耳を澄ます。少しでも、彼女のことを知りたくて。少しでも、彼女と心を通わせたくて。
「……大事なんだね」
「言うまでも無い。私がこうしていられるのも……こうして、クイーンを思えるのさえ。全て、クイーンと出逢えたから」
「……なら……私は、謝らないといけない」
体を、離す。目と目を合わせ、視線を重ね。
「私は……アリスの所に行く。……アリスを、止める」
「何故……」
「……あなたも……バルキリーも、分かってる筈だよ。あなたがクイーンを大切に思うのと同じ。私は……私たちは、アリスを救いたい」
「救いなど無い。アリスの精神は、既に壊れた。……この先にいるのは、お前たちの知っているアリスでは、無い。お前たちの知るアリスなど、もう居ない」
叫びにも似た彼女の言葉に、小さく首を振る。
「ううん。そこに居るのは、アリスだよ。終える時を逃してしまっただけ。私たちが、先に、アリスを置いて行ってしまったから……だから、今度こそ。もう、終わったんだって伝えないと」
「……それは……お前たちの、エゴだ」
彼女は、私の胸に、額。重みを預けて、そう言い。エゴと言うならば、確かにそう。少しだけ苦笑して……それでも、私の思うことを。私たちの答えを、返す。
「そうかもしれない。けれど……置いてなんていけない。もう、アリスから……離れることなんて、出来ない」
そんな、答えに。腕の中で、彼女は……少しだけ、強張っていた、彼女の体から。力が抜けていくのを感じて。
「……私は、どうすればいい。クイーンは……クイーンの幸せは、何処に在る」
「何処かに。……でも、其処まで連れて行けるのは、私たちじゃ無いよ。それはきっと、あなたの役目」
手を。彼女の体から離す。向かい合ったまま。目を合わせたまま。私の答えを、彼女へと。そして。
「私たちのことは……アリスと、私たちのことは。私たちがきっと終わらせる。その後に、二人が……バルキリーとクイーンが幸せに生きる道を、そこに続く入り口を、必ず作ってみせる。だから……」
私の言葉、心からの言葉、約束。彼女は黙して、考えるように、迷うように。唯々私の言葉を聞き。
「……確実性に、欠ける。可能性は、限りなく、低い」
そ
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