第四章
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「スピードも球威も」
「バッティングもね」
「あれは打てないわ」
咲は彼女にしては珍しく弱気な口調で言った。
「一六〇オーバーなんてね」
「けれど打たないと」
「ええ、勝てないわ」
ペナント自体にとだ、咲はカラオケボックスの中で言っていた、だがこの時はまだ余裕があった。夏の間は。
「とても」
「そうだよな、やっぱり」
「日本ハムの切り札よね」
「投打両方で」
「高校野球みたいだけれど」
「どうにかしないと」
咲は真剣にだ、大谷をどうにせかせねばと考えていた。ファンとして。
「あの人だけは」
「中田さんもだけれどな」
「あとレナードさんも」
「何だかんだで打線もいいし」
「そっちもね」
「あそこは攻守がいいのよ」
内野外野共にだ。
「伝統的に」
「強いのには訳があるわね」
「ここまで追い詰められるなんてね」
咲は真剣にだ、危惧しだしていた。そのうえで秋を迎えると。
首位攻防戦はさらに激しくなった、首位の入れ替わりもあり遂に最終決戦となった。その二連戦において。
大谷が先発した、咲は未晴達と共に咲の家でお酒を飲みつつネットで観戦をしていた、その第一試合においてだった。
ソフトバンク打線は打てない、その大谷を。そして次から次にだった。
イニングは進む、その中で大谷が投げたボールの球種とスピードを観てだった。春華達も唖然となった。
「な、何だよこれって」
「こんなのはじめて見たわ」
「一六〇キロ越えるストレートでも凄いのに」
「今のは」
「私もはじめて見たわ」
未晴もこう言った。
「今のは」
「一四七キロのフォーク」
咲は唖然となっていた。
「何これ」
「確かな」
ここで春華が言うには。
「昔一四三キロのフォーク投げた人いたな」
「あっ、伊良部さんよ」
阪神ファンの凛が答えた。
「あの人阪神にいたから聞いてるわ」
「ああ、あの人か」
「あの人が投げたことがあったわ」
「伊良部さんは一五八キロ投げたらしいわね」
静華も言う。
「速球派で」
「一六三キロ投げたって話もあるわよ」
未晴はこう言い加えた。
「あの人は」
「それ凄いわよ」
七々瀬jは伊良部のその話に唖然となっていた。
「打てないわよ」
「いえ、その一六三キロよりもね」
咲はネット中継を見つつ友人達に言った、飲んでいるのは澄み切った柚酒だったが飲む手が完全に止まっている。
「今のはなかったわ」
「大谷さんさっき一六四キロ投げてたよな」
「ストレートで」
「その伊良部さん以上」
「しかもフォークは一四七キロって」
「打てないわよ」
咲は春華達に言った。
「これは絶対に」
「フォークのスピードじゃないわよ」
未晴も言った、見れば六人共飲む手
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