ボツ小説整理してたらこんなの出てきたIS二次創作
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ゃ毎日励ましてやったよ。あの人の家族は空襲で逃げ遅れていなくなっちまったからね。他に助けられるのは、出兵前から友達だったあたししかいなかった」
ばあさんは既に90歳に届こうかという高齢だ。それだけ長く生きているから、時折太平洋戦争時代の話をこうして時々漏らす。自分が忘れる前に、自らの戦争経験を誰かに聞かせたかったのかもしれない。その時代を生きた人からは、さぞ今の世の中は歪に思えるだろうと茶を啜りながら思った。
「他はみんな……B-29の落っことした爆弾で防空壕ごと生き埋めになったり、どこぞの島国で斃れたりだよ。だぁれもいなくなっちまった。だから一緒に居ようって、2人で手を取り合って生きて来たんだ」
あの人とは、ばあさんの夫――つまりじいさんの事だ。十数年前に病気で他界してしまったらしく、面識はないが遺影くらいは見たことがある。年の割に、と言っては失礼だが、しっかりした印象を受ける人だった。
夫婦二人で今までの時代の流れを乗り越えて来た。
そこには男だから、女だからという考えを超越した絆があった筈だ。
「女が戦えるようになったから、何だって言うんだい。アイエスってのに乗ってメリケン兵とまた戦争でもするってのかい?本当に大変なことが起きてたら、男だ女だって言ってられなくなるんだよ」
「えばりたいのさ。ISが出てきてみんなそっちに注目したらそれが女しか動かせないってんだから、便乗してるだけだろう。本当に戦いが起きるなんて考えてないからああやって好き放題男をけなすのさ」
「えばってばかりの男は、あたしゃ好かん。やけど、えばってばかりの女はもっと好かん。テレビに出とる女子は………世の中の事、何にも分かっとらん。原爆を斬っても放射能は降るし、大空襲みたいに仰山来たら、あんなナヨナヨした子らで御国を守りきれるもんかい」
「……皆、考えてもいないんだろうな。ISがあれば何でもできるって勘違いしてるんだ」
「あたしゃ今の世の中が怖いよ。何だろうね、あの子たちを見てると真珠湾攻撃の結果をラジオの前で聞いてた皆を思い出すんだよ。皆本気でメリケンに勝てるって信じ込んでて………日を追うごとに間違ってることに気付いていっても、結局誰も言い出せなかったあの空気を……」
そう呟くばあさんの目はどこまでも寂しそうで、本当に震えているようで、微かに憤っているようでもあった。俺みたいな若い奴には決して口出しできないような言葉の重みを感じながら、俺はこの話を続けるのを止めた。
「冷蔵庫に桃が入ってたよな。ちょっと取って来るよ。ばあさんも食べるだろ?」
「え?……ええ、そうだね。あたしも食べるよ。丁度いい熟れ具合だから早く食べないと腐っちまうしね」
ばあさんが小さく何かを呟いた気がした。ありがとうか、ごめんねか
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