■■インフィニティ・モーメント編 主人公:ミドリ■■
壊れた世界◆ラストバトル
第六十五話 狂気
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、必ず現実世界に帰してみせる!!」
「あなた達の人生をこんなところで無駄にしちゃダメ! 立ち上がるのよ!!」
その叫び声が、空気を震わせた。シリカはようやく、名状しがたいソレから視線を外すことに成功した。ミドリとストレアが必死でプレイヤーを守ろうと動き回っているのを捉えた。
彼らはただわたしたちだけのために、あんな恐ろしいモンスターと戦っているんだ。それに気づくと、シリカの中にようやく『するべきこと』ではなく、『したいこと』を考える余裕が生まれた。
――わたしは、自分らしく生きたい。
――守られるだけは嫌だ!
――守るだけの力が欲しい……!
いつだったか、マルバと出会い、自分が生きる意味を再確認したときの思いが、再び蘇ってきた。
そう、たとえ力及ばず死ぬことになろうとも、ただ殺されるのは『わたしらしくない』。かつて、彼女は守る力が足らず、何もできない自分に絶望したことがあった。今、彼女には力がある。無力だったころの自分ではない。せっかく手に入れた守る力を使わずして、彼女は『わたしらしい』生き方で生きたと言えるのだろうか? たとえ死が避けられないとしても、『わたしらしく』生きるために、一番やりたいことはなんだろうか?
気づけば、彼女は一歩踏み出していた。足元に転がった短剣を拾い、ミドリたちの元へ駆け寄る。おぞましい姿のモンスターをまともに見ることは相変わらずできなかったが、それでも仲間たちと肩を並べ、大切なものを、大切な人を守るために戦いたいという気持ちが、彼女をつき動かしていた。
†
一体僕は何をしているんだ……?
マルバは圧倒的存在を前に立ち尽くしていた。ふと目を下げれば、彼の両手には反抗の証である武器が握られていて、彼はそれをたまらなく不可解に感じた。この存在を前に、彼のような小さな存在が一体何ができるというのか、彼には全く分からなかった。自然と手が緩み、両手から短剣が滑り落ち、床を転がった。武器が転がってゆく様子を、彼は無感動に眺めた。
ああ――なにもかもが、どうでもいい。このまま死ぬのは明白だったし、彼はそれに甘んじるつもりだった。彼は今、ここまで昇りつめた自分を誇りに思っていた。ここで死んでも本望だというような気分にすらなっていた。やれることはやった、それでどうやっても勝てない敵に出くわして死んだ、十分じゃないか、と。これは逃げではない。相手の強さを認め、敗北を受け入れる、ただそれだけのことだ、と。
だのに、まだ諦めない、諦めの悪いヤツもいるものだ。
マルバは、これほどまでに圧倒的なその存在を前に、まだ反抗心を捨てない仲間たちを、好奇と、わずかばかりの軽蔑を含んだ視線で見つめた。現実を認識していないからあんなことができる、ただそれだけのことだと、マルバに
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