第四章
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「全く何の興味も出さずにね」
「ああ、やっぱりそうか」
「今年五位だったからね」
「それは仕方ないな」
「だから今は大人しいのよ」
「そうか、まあ騒がしくないのは何よりだ」
「そう?」
妻は夫にすぐに問い返した。
「うちは一人じゃないのよ」
「そういうことか」
「ほら」
「ああ、そうだな」
二人共自分達の娘を見て納得した。
「千佳がこうだからな」
「うちは二人だから」
「今年はカープか」
「まさかって思ったけれどね」
「ようやくなのよ」
その千佳の言葉である、顔はテレビに向いたままだ。
「優勝出来たのよ」
「二十五年振りか」
「生きていてはじめて観るのよ」
「だから余計にか」
「楽しくて仕方ないわ」
こう言って試合を観るのだった、カープが追加点を得る度に大喜びをしつつ。
そして二連勝の後の月曜日にだ、にこにことして登校してクラスメイト達にも言うのだった。
「二連勝、大きいわね」
「ああ、やっぱり言ったか」
「絶対に言うと思ったわ」
「カープ連勝したから」
「言わない筈がないって」
「言わずにいられないのね」
クラスメイト達はそんな彼女をやれやれといった顔で迎えて言った。しかし千佳はにこにことしたままだった。
「このまま日本一かしら」
「そうなったらいいな」
「日本一になったら」
「おめでとうとだけ言うから」
「まあ喜んだら?」
「皆うちのお兄ちゃんみたいに冷めてるわね」
千佳はそんな彼等に少し面白くなさそうな顔になって返した。
「喜ばないのね」
「阪神ファンだらか」
「僕も」
「私もよ」
「私だって」
関西なので大抵のクラスメイトがこう返した。
「広島は別に」
「今年大負けしまくったけれど嫌いじゃないけれど」
「どうでもいいから」
「阪神のことじゃないから」
「やれやれね、じゃあ皆好きな曲は」
「六甲おろし」
皆の言葉は一つだった。
「決まってるじゃないか」
「阪神ファンだからね」
「他の曲はないから」
「野球については」
「ううん、何かこうカープ万歳って子はいないのかしら」
千佳はこのことにどうにも残念に思った、だがクラスメイト達はそんな彼女にまた言った。
「だからここ関西だよ」
「阪神のお膝元なのに」
「広島ファンは広島がメインよ」
「関西になると」
「そういうことね、じゃあお兄ちゃんが主流なのね」
千佳はこのことをあらためて思い知った。
「関西じゃ」
「当たり前だよ、ここは阪神だよ」
「今じゃ全国区だしね」
あの自称球界の盟主巨人を押しのけてだ。
「そこは絶対だから」
「まあ広島も否定されてないけれど」
「それでもやっぱり」
「関西は阪神」
「そこは変わらないから」
「そういえば私も
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