第三章
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「僕はやっていくよ」
「全く、どうしてそこまで好きなのよ」
「好きだから仕方がないじゃない」
理由になっていない理由に基づく返事だった。
「子供の頃から」
「何もかもが阪神で」
身にあるもの全てがだ、まさに。
「カレンダーも帽子も」
「理想の生活だね」
「まあ頑張ってね」
千佳はその兄に横から言った。
「今年はうちが優勝したから」
「おめでとうとは言っておくな」
「どうもね、ただね」
「来年もっていうんだな」
「連覇するから」
「宜しくね」
「来年その言葉を言うのは僕だからな」
あくまで引かない寿だった、彼は自分のトーストにチョコレートとクリームを縦縞に塗ってそうして食べている。
「覚えていろよ」
「ええ、そうしておくから」
「来年こそは」
「さて、と。今日からシリーズだから」
千佳はここでにんまりと笑って言った。
「応援頑張らないとね」
「カープも日本ハムも健闘したらいいな」
「そのうえでカープの日本一ね」
「いや、それはどうでもいいさ」
寿は妹の願いにはクールだった。
「心の奥底から」
「どっちが勝ってもいいの」
「阪神じゃないからな」
「冷たいわね」
「御前一昨年のシリーズで同じこと言っただろ」
「そうだったかしら」
「阪神とソフトバンクどっちが勝ってもいいってな」
このことを蒸し返して言うのだった。
「それでテレビに見向きもしなかったな」
「カープじゃないのに何がいいのよ」
「だから僕もだよ」
「どっちが勝ってもいいのね」
「ああ、巨人が出ていたら相手を応援するけれどな」
例え阪神が出ていなくともだ。
「カープと日本ハムなんて」
「どっちでもいいのね」
「心の奥底からな、じゃあ今日も学校に行って」
ベーコンエッグを食べながらだ、寿は言った。
「部活の後は勉強だよ」
「シリーズは観ないで」
「観て何の意味があるんだよ」
「二十五年振りなのに」
「それはそっちの都合だからな」
寿は広島のことについては徹底的に無関心だった、怒りはしないが。それでこの日は学校から帰ると実際に家で勉強に励んだ。その兄に対して千佳は。
カープの応援に励んだ、ホームスチールが成功した時はリビングのソファーの上で大はしゃぎだった。
「やったわ!」
「えっ、今のはな」
「凄いわね」
たまたまリビングでくつろいでいた両親も驚いた。
「まさかシリーズでホームスチールなんてな」
「物凄いことをしたわね」
「しかも大谷さんから一点よ」
千佳はこのことからも言った。
「これは凄いわね」
「ああ、流れが傾くかもな」
「広島にね」
「いきなりいいもの見られたわ」
カープ帽に赤い法被にユニフォーム姿でメガホンを手ににこにことしている。
「
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