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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第2章 魔女のオペレッタ  2024/08 
16話 円卓の外側
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 五十五層主街区、鉄の都の異名に準えられた《グランザム》は鉄塔の硬質で、街を覆う雰囲気もどことなく冷たい。おまけに気候パラメータまで寒冷、おまけに泣く子も黙る攻略組最大手《血盟騎士団》の本拠地が据えられているとなれば、おいそれと近づきたくはない場所として印象を植え付けられても文句は言えまい。ましてや前線攻略の爪弾き者たる俺からすれば、言わずもがな長居など頼まれても願い下げというもの。しかし、《笑う棺桶》のアジトを発見してしまった重要参考人として招致されれば、個人の意思など意味を為さない。ましてやアインクラッドに縛られたプレイヤーの命運云々と大義名分を鬼の副団長殿直々に並べ立てられてはリード付きの首輪を引かれているも同然。

 こうして泣く泣く《聖騎士》様や(くだん)の副団長殿、聖竜連合のリーダーと副官数名、戦乙女を統べ、いつの間にか《騎士姫》などと二つ名を得るまでに至ったクーネとギルド創設メンバーの面々に囲まれた格好だ。
 まるで異端審問に掛けられた心持ち、とまでは言わなくとも、この重々しい空気。向こうも弁えておいそれと会話を持ち掛けはしまい。ともあれ、こうして俺は攻略組の主軸となるプレイヤーが一堂に会する場に晒される羽目になったわけである。中継役でありながら俺をアスナに売りつけた鼠と、わけがわからないままに俺をアスナの前に引き摺り出した相棒と駄エルフにはあとで説教をすることとしよう。決定事項である。


「定刻となったので始めるとしよう。これより《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》捕縛作戦における情報収集担当者の証人喚問を執り行う」


 時刻は十三時。
 手元に開いていたメニューウインドウのデジタル時計の時刻が変わると同時に発せられた聖騎士――――《ヒースクリフ》の号令によって、ウインドウをスワイプして消失させる。
 半環状の円卓に座す攻略組に名を連ねるギルドのリーダー達。そのどれもが声を受けて視線を一斉に向ける様は、人見知りの俺には荷が重い重圧なのだが、この場に立ってしまった以上は腹を括るしかないだろう。


「幸い、所在地と周囲の地形はアルゴ君の中継で把握出来ている。先日、聖竜連合より派遣された斥候部隊の情報とも相違箇所はない。情報の信頼度は限りなく高いものと見て間違いないだろう、では………――――………どうしたのかね?」


 手元の資料をめくりながら情報を確認するヒースクリフの声を遮るように、一人だけ書面ではなく自身に発言者へ鋭い視線を向ける隣席者――――クーネに対して、視線が返される。


「ヒースクリフさん、聖竜連合の斥候部隊について私達は一切聞かされていませんでしたけど、どういうことですか?」
「これはリンド君からの進言があって行ったものだ。情報の信頼性の確認という意味でも必要なものであると見て
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