暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第2章 魔女のオペレッタ  2024/08 
16話 円卓の外側
[8/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
る理由がない。これが全てだ。


「君の《隠蔽》スキルや、それに付随する潜伏能力は戦闘を主体に置く攻略組のプレイヤーとは一線を画する域に在ると理解している。おまけに、攻略組の最大勢力であるどのギルドにも所属していないソロプレイヤーだ。これほどの適任はいない」
「どのギルドにも汚名を残さないで済むと言いたいのか。とんだ蜥蜴の尻尾切りだな」


 言い終え、ヒースクリフに背を向けて執務室の扉へと歩を進めた。
 生憎と妄言に付き合うつもりはない。そもそも今日は隠しコンテンツの探索を切り上げての休日にする予定だった。余りにも無遠慮な物言いには心底うんざりさせられる。


「まだ話は済んでいないのだが?」
「暗殺を持ち掛けてきた件については忘れておいてやる。聖騎士様の威光に(きず)を付けるのは忍びないからな」
「では君は、これからずっとヒヨリ君が他者に命を奪われるリスクを容認しながらこの浮遊城に生き続けるのかね?」
「何だと?」
「殺人を犯したオレンジプレイヤー、所謂《レッドプレイヤー》はより強いプレイヤーを狙う傾向にあるらしい。彼等からしてみればゲーム感覚なのだろう。あの円卓に着いた彼等も然り、ヒヨリ君も細剣使い(フェンサー)としてはうちのアスナ君と並び称される実力者、おまけに遠距離攻撃系のソードスキルを操るエルフのテイムモンスターまで所持する稀有な存在だ。名もスレイド君以上に売れている。もしかすると、彼女は恰好のターゲットなのかも知れないな」
「……それは、推測の話だろう」


 だが、否定することが出来ない。
 事実として、PKのターゲットとなるのは圏外に足を運ぶプレイヤーだ。その中でも、前線付近に潜伏するレッドプレイヤーは相対的に狙うプレイヤーのレベル帯も増してゆく。当然、狩りを楽しむという感覚であるならば、ゲームとしてPKを捉えるにあたっての趣味嗜好を持つ者もいないとは限らない。そして、認知されている者であればあるほどに、そのようなPKのターゲットとなるリスクも高くなる。順当に考えて、レッドプレイヤーに明確な意思を持って狙われやすいのは俺ではなくヒヨリだ。ヒースクリフの弁も、間違いではない。


「確かに、君の言うように推測の域を出ない話だ。だが、妄言だとは思っていない。あくまで一つの危険性の提示だ。しかし、君は既に判明した禍根を放置するほど楽観主義者でもないだろう?」
「………………………」


 机に手を組んだヒースクリフは、俺の言葉を待つように口を噤む。
 如何に悪名高いとはいえ、安心を得る為に殺すという動機は果たして正しい行為なのだろうか。
 自問自答を繰り返しても、答えなど易々と出てはくれない。誰かに問おうにも、出来る筈がない。
 堂々巡りとなった思考を遮るように、ヒースクリフは短く
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ