第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
16話 円卓の外側
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を持つこともなく、攻略に益のあるであろう会議の進行を優先させた。その理由は求めないでおくとするが、少なくとも君はアインクラッドの攻略という意味では否定的な意思を持たず、且つその為に合理的な意思決定を為せる人間であるという証左だ。加えて、依頼を確実に遂行する手際も技量も特筆すべき点だろう」
「で、結局のところ何が言いたい?」
見透かされるというのは、当たるにせよ外れるにせよあまり好かない。
値踏みするような口上に痺れが切れたところで、俺はヒースクリフの思惑の根幹を問い質していた。
対するヒースクリフも口角を吊り上げ、薄い笑みを浮かべると、僅かな間を置いた後に口を開く。
「スレイド君、君に《笑う棺桶》首領――――《PoH》の暗殺を依頼したい」
「殺せ、だと?」
余りにも常軌を逸した依頼だった。
やや受け入れがたい発言に当惑して単調な言葉を返す程度しか出来なかったが、この世界はHPが全損すれば現実世界の肉体も死に至る。故にこれはラフコフを相手取ってのGvGではない。文字通り、相手が抵抗すれば死に近づくし、殺し殺されることも否定できない凄惨さも孕んだ作戦だと認識している。言葉で表現することは容易だが、例え対象が殺人集団の首領であれ、生きた人間を手に掛けるのだから、倫理観から外れた行為であるなど言うべくもない。
「そう。実のところ二〇二三年の大晦日にPoHが《笑う棺桶》を結成し、それを宣言してからというもの、オレンジギルドによる被害が増加している傾向にある。オレンジプレイヤーとはいえ、精々食うに困ったプレイヤーがコルやアイテムを強盗紛いの手法で巻き上げる小規模で死者も出ないような程度が専らであったが、彼が存在を周囲にアピールし始めた昨年から、その性質は大きく変貌しつつある」
「殺しを、楽しみ始めたとでも?」
「倫理面でのハードルが下がった、とも言えるだろう。性質の悪いことに、こういった集団心理というものは簡単に伝染する。それに、PoHという人物のカリスマ性は魔的だ。一つの組織を取り潰したとして、彼が生き残ればいたちごっこになる恐れがある」
「それで、俺に頭を潰せと? そんな話で納得できるとでも思うのか?」
先ず、交渉の上で俺を席に着かせることが出来ていない。
他者を殺めるには相応の覚悟が要るし嫌悪感も圧し掛かる。決して二つ返事で受けられるお使いではないだろう。そもそも俺にはメリットのない申し出だ。クーネ達はギルド創設時のメンバーだけでの参加だと聞いている。少数精鋭で、引き際の読みに関しては攻略組で随一の鑑識眼となれば、彼女達から犠牲が出るとは考えにくい。ヒヨリもティルネルも参加させない。俺は現状のままだろうと痛みを被らない。だから、ヒースクリフの言葉に耳を傾け
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