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Three Roses
第十九話 聖堂にてその六

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「国の貴族達の力を徹底的に削ぎ領地は与えるが貰えるのはそこからの禄だけで代々ではなくしかも兵は与えずな」
「全ての民は皇帝の下にある」
「そうした国にしたのですか」
「皇帝一人が絶対者として君臨する」
「そうした国を創り上げたのですね」
「絶対者として」
「そうだった」
 まさにというのだ。
「何の躊躇もなく逆らう者は全て粛清してだ」
「情けはかけず」
「そうして」
「そうだ、その皇帝は冷たい心をもっていたという」
 東方の最初の皇帝の性格もだ、太子は側近達に話した。
「豺狼の様な心だったという」
「狼、ですか」
「あの様な心を持っていたのですか」
「獣の様な」
「冷たい」
「そうだったという、非情だった」
 まさに獣の様にというのだ。
「誰よりもな」
「そしてその非情さで、ですか」
「あの国の今を築いた」
「そうでしたか」
「そうだったというが、自身に逆らう者は誰でも粛清する様なこともだ」
 それもというのだ。
「出来るものではない」
「到底、ですね」
「殆どの者はそこまで非情になれない」
「雪の帝国の皇帝の様には」
「東の国の皇帝の様にも」
「人は非情になりきれるものではない」
 太子は強い声で言った。
「そうおいそれとはな」
「それは太子も同じですか」
「何処までも非情にはなれない」
「それが難しいことですか」
「非常にな、そしてだ」 
 太子はさらに言った。
「妃もだ」
「あの方もですね」
「そこまで非情な方ではない」
「そうした異国の皇帝達とはですね」
「また違うのですね」
「そうだ」
 こう言うのだった、マイラについて。
「根は決してだ」
「非情ではない」
「そうした方ですか」
「暖かいものを知っている」
 そうした皇帝達とは違い、というのだ。
「表には出ず自身も殆ど感じていないが」
「それでもですか」
「あの方は人の温もりもご存知ですね」
「そうなのですね」
「そうだ、妃にしてもな」
 太子は自分のことも含めて言った。
「そこがよくありだ」
「悪くもある」
「そうだというのですね」
「そこまで非情にことを為した東の皇帝だが」
 その古の皇帝の話をまたしたのだった。
「死後国は崩壊し新たな王朝となった」
「折角強固に法を進めてもですか」
「貴族達を抑え学者を粛清しても」
「書を焼いても」
「皇帝の苛烈な政は民も苦しめた」
 他ならぬ彼等もというのだ。
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