暁 〜小説投稿サイト〜
Three Roses
第十九話 聖堂にてその四

[8]前話 [2]次話
「何といってもだ」
「危険であり」
「何とかしてですね」
「これまで以上に力を削ぎ」
「帝室に力を集めますか」
「皇帝、帝室の力は確かに強くなった」
 かつての帝国と比べてもというのだ。
「代々の偉大なる祖先達の尽力でな、だがそれはだ」
「王国やこの国と比べますと」
「まだ弱いですね」
「この国もそれにまだ腐心していますが」
「我が国はさらに弱いですね」
「帝室はまだ十分な土地も予算も兵も持っていない」
 この三つをというのだ。
「東方の雪に覆われた国では皇帝がかなり強引に権限を集中させたらしいが」
「有力な諸侯を片っ端から処刑し」
「皇帝に逆らいそうな街の民を殺し尽くした」
「無理に皇帝の領地を多く取り」
「そして貴族達を黙らせてですね」
「それは滅多なことでは出来ない」
 東のその寒い国の様なことはというのだ。
「あの国の皇帝は怪物の様な人物だったらしいからな」
「諸侯を一族まとめて即座に処刑する」
「しかもこれといった理由もなく」
「それに嫌な顔をした他の諸侯もすぐに処刑する」
「即座に徹底してそうしていったそうですが」
「そんなことはまず出来ない」
 例えしたくとも、というのだ。
「人ならばな」
「怪物ならともかくですか」
「その国の皇帝の様な人物でもない限り」
「そうしたことは出来ない」
「誰もですね」
「確かに人は暴力に弱い」
 太子はこのことについても言った。
「圧倒的な暴力の前には反抗する気をなくす」
「そうした気力を失いますね」
「恐怖のあまり」
「そうなってしまいますね」
「だから異端審問は強い」
 太子、そして帝国が嫌う法皇庁の尖兵達もというのだ。
「圧倒的な暴力、拷問と惨たらしい処刑を武器にしているからな」
「多くの者が黙る」
「抵抗する気をなくすのですね」
「あまりもの恐怖を受け」
「そのうえで」
「そうだ、このことを見てもわかる」
 彼等にとって身近な忌むべき存在をというのだ。
「圧倒的な暴力は強い」
「他者を黙らせる」
「抵抗させませんね」
「無気力にさせる」
「そうしたものですね」
「政としてのかなりの力がある、しかしだ」
 それでもというのだ。
「この力を使う者は怪物だけだ」
「そう言われるまででないとですね」
「使えはしない」
「そうなのですね」
「幸か不幸か私はだ」
 太子はというと。
「そうした者ではない」
「怪物では、ですか」
「ないと」
「そう言われますか」
「それが最もてっとり早いと思ってもな」
 例えだ、こう思っていてわかっていてもというのだ。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ