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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
58.第八地獄・死途門界
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を垣間見たティオネは俺を侮蔑したのだ。こちらの世界の「死」と余りにも違いすぎるから。

「ティオネちゃんはそれが嫌だったんだろうな。この世界に則った死の在り方じゃない。俺は、オーネストなんかより遥かに人間的でない存在。いいや、いっそ人間の成り損ないなんだよ」

 死ぬのが幸せなんてのは、生物種的本能から鑑みるに異質だ。
 生物種として破綻していると言ってもいい。
 神の出来損ないである人間の、更に成り損ない。
 もしそれこそが「神に近しい」という事なのだとしたら、とんだ皮肉だ。

「オーネストを見てるとイライラする時がある。でもそんな時、俺はオーネスト以上に自分自身にイライラしている。俺はすぐに何でもいい加減に考えて投げ出そうとするのに、あいつの背中は俺も含めて全部乗っちまうんだ。乗せて、苦しくて潰れそうなほど伸し掛かられても進むんだ。すげえだろ?真似したいけど、ちょっとアイツの境地に達するのは無理だと思う」
「俺はお前だ。だがお前はオーネストではない。その結果は自明の理だ」
「そう、当たり前だよ。当たり前だけど……その当たり前が俺にはどうしようもなく重く見える。だから思った。俺がオーネストのこぼした分を拾って背負えるんなら、それをしてくれる男なんだとアイツが思ってくれれば、今ほど極端で狭い生き方をしなくて済むんじゃないかってさ」

 そう言いながら、俺は歩き出して十字架に縛り付けられた鎖を掴んだ。
 鎖は、最初から俺の支配下にあったようにあっさりと外れ、磔になっていた『死望忌願』が俺の胸に落ちてきた。俺はそれをたたらを踏んで受け止め、背負う。
 ぞっとするほどに軽いそれはしかし、弱りきった俺の体をへし折ってしまうのではないかと思えるほどの重圧を体に与えた。ただそれをしているだけで息が切れ、眩暈がする。なのに、意識だけはどこまでも冴えていくのを感じる。

 これがオーネストの生き方だ。自分がどんなに折れそうでも、決して背負うことを諦めない。
 なんという苦行なのだろう。こんな奴、忘れて路端にでも放り投げれば楽だろうに。
 そんな楽な道に逸れることが出来ない人間が、あいつなんだ。

「だから……悪ぃけど、俺は……まだまだ踏ん張らせてもらう、ぜ……!……なに、どうせ帰り道は一緒なんだ……死ぬまでの旅路――旅は道ずれ世は情け。まさか……今更付き合いきれんとは、言うまいな……?」
「それが、お前の探した夢か?」
「そんなん、知るか……ただ、やりてぇと思った……夢かも知れんが、違うかもしれん……それ、だけだ………!!」

 歯を食いしばって、腰に渾身の力を籠めて前へ踏み出し、十字架にもたれかかる。
 俺に抱えられた『死望忌願』はいつか俺に見せた苦笑と共に、俺と共に十字架に触れた。

「なぁ、アズライール。十字架っ
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