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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
58.第八地獄・死途門界
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。自由をこよなく愛するオーネストにとって、この戦いは辟易する程に億劫だった。

 黒竜の反撃が少しずつ激しくなり、オーネストもその激しい反撃が他の誰かに命中しないようにさらに死力を振り絞る。全身をバラバラに引き裂くほどの反動は感じないのに、心には重苦しい鎖が絡みついたように重圧を感じさせる。

『ギャオオオオオオオオオオオオオッ!!』
「ッづああああああああああッッ!!」

 黒竜の爪と振り上げた剣が交差し、ギリギリで爪を弾く。だが先端から発せられた真空の刃を防ぎきれずに体に横一線の切り傷が入り、血液が噴出する。流れ出る血は熱いが、何も考えずに暴れ狂っていた時に流したそれと比べると、余りに冷めたものに思える。

 ふと剣に違和感を感じて見やると、戦闘の反動でとうとう二本目の剣に罅が入っていた。予備の剣はあと一本――僅かに黙考した末、オーネストは左手に三本目の剣を取り出し、その腹に罅割れた剣で『神聖文字』を掘り込み、最後に切り裂かれた傷から漏れた血で文字をなぞった。

「ちっ………この俺が自分の血を利用してヘファイストスの真似事とは、本当に最悪の気分だ」

 指でなぞった文字が幻想的な輝きを放ち、無銘の直剣を包み込んでいく。
 ヘスティアが自らの眷属の為にヘファイストスに作成を依頼した、『神聖文字』の刻まれたナイフ――アズが起きてからの恐らく黒竜との戦いが続くのに、既に2本の剣を駄目にしてしまったオーネストが苦肉の策で施した『ヘファイストスの真似事』は、いっそ腹立たしくなるほど思い通りに剣の内包する法則を底上げしていく。

 手段を選ばなければ死ぬぐらいなら、そのまま死んだ方がいい。そんな考えを抱いているというのに、さっきから先の為に節操なしに使いたくなかった力を使い続ける。この街で指折りの高慢ちきな自分がたった一人の間抜けの為に自らここまで自分の意志を曲げることが、信じられない。

 ――人は、人の為にこんな選択ばかりを続けているのか?

 ――あいつも、俺の知らないところではそうだったのか?

 自問したオーネストは、血が付着したままの手のひらで鬱陶しそうに前髪を掻き揚げた。

「アズの奴……何が『未来(あす)はいらない』だ。こんなに重い荷物を放り出してくたばる腹積もりだったのか?この荷物、俺には重過ぎる。とっとと起きて――引き取りに来いッ!!」

 それまで、俺は俺であることを我慢しておいてやる――言葉にせずそう呟いたオーネストは、再び竜巻のような風を纏って空の支配者に刃を向けた。



 = =



 じゃらり、と鎖が鳴る音を聞きながら、そこに足を踏み入れる。
 足場一面が鎖で埋め尽くされたその真っ暗闇の中心に、スポットライトを当てられたように降り注ぐ明かりが、一人の人間を照らしあ
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