暁 〜小説投稿サイト〜
俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
58.第八地獄・死途門界
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質が異なる。

 敵の全容が見えてこない。

 少なくとも、個人で起こすような『私怨』の節がなく、むしろ今まで興味がなかったものを偶然手に取るように現れているというか――そう、命令されてとりあえず行動する、という印象を受ける。一方的な悪意や恨みをぶつけられることが圧倒的に多かったオーネストに関連するトラブルにあって、このような『小ざっぱりとした』干渉は異質だ。

(オーネストに干渉してはいるけど、それが本質ではない……?オーネストに興味はあるけど、1番や2番に食い込むほどではないから片手間に調べているような………だとしたら、こいつの主の目的って――)

 思考にふけるキャロラインの背中――崩落した59階層から、風が吹いた。
 先ほどまでの濁った空間が押し出され、今度はどこか激しくも不快ではない不思議な感覚が押し寄せる。突然の変化に戸惑う中、ココだけは、この風が何なのかを感覚的に感じ取った。

 これは、そう、いつかダンジョン内で無茶をして倒れたときに感じたそれ。
 母親を思い出す程に柔らかく優しい、けれどただ優しいだけでない棘がある、そんな人の存在。

「オーネストだ、この風――オーネストの起こした風だ」



 = =



 『疾風』の二つ名を持つあのエルフがここにいれば、自嘲気味に呟くだろう。

 ――あれに比べれば私などそよ風だ、と。

「おォオオオオオオオオオオオオッ!!」

 隼の羽ばたきすら霞んで見える変幻自在の刃が黒竜に襲い掛かる。それら一撃一撃の威力は先程までの捨て身の斬撃には及ばないが、膨大な風を纏うオーネストの刃と体の軌道は鳥でさえ絶対に不可能な超高速戦闘を行っていた。

 斬り抜いた瞬間に方向転換して横っ面を切り付け、接近すると見せかけてターンして視界から外れ、その瞬間に死角から斬り付ける。重力を無視するかの如き異次元な戦闘方法は、捉えることは愚か抵抗する方法さえ存在しない。

 空力、揚力、抗力、生物が空中を自在に動くために必要なありとあらゆるファクターを省略することを可能とした魔法という理外の力。
 人間どころか馬車さえ空の彼方に容易に吹き飛ばせる風速がオーネストの背後で渦巻き、放出される。急加速によるGの影響も、『万象変異』の力によって大幅に軽減されている。いや――オーネストの肉体そのものから生成される神秘の風は、オーネストと風の境を曖昧にしている。

 しかし、黒竜もまた異次元な存在。オーネストの高速戦闘を捉えることは出来ずとも、動きに反応して直撃を逸らしたりカウンターを狙って殺人的な威力の攻撃を放つ。オーネストの動きを学習して対応し、対応されていることを自覚したオーネストが新たな行動パターンを作成し、それにまた黒竜が合わせてを繰り返す。

 千日手とな
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