58.第八地獄・死途門界
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謎かけのような御仁であるな』
『じゃあなんなの?』
ただ二人、この悍ましい存在の悍ましさを感じ取れなかった人形が無邪気に男にその正体を問うた。
男は微かな感情を乗せた偽物の笑顔で、嗤った。
「きみたちの親戚だよ――!」
『マスターのカクシ子!』
『主よ、誠か!?』
「絶対にノウッ!!そういう意味じゃなくて『つくられた存在』ってことだよ!!」
相変わらず緊張感があるんだかないんだかわからない人形主従にココとキャロラインは頭が痛くなってくる。その様子さえも張り付いた笑みで観察していた男の外側が、少しずつ液体となって崩れ始めた。
べちゃべちゃと悪臭と異音を立てながら崩れる人型に、ココは思わず目を逸らす。キャロラインは警戒してか見ていたが、やがて臭いの酷さにむせてそっぽを向いてしまった。生身の中で唯一人、その光景を眉をひそめて見つめ続けるヴェルトールだけがそれに耐えていた。
「おや、それなりに出来のいい体にしたつもりだったのですがねぇ。その槍の持つ特異性質と少しばかり相性が悪かったかな?貫かれた細胞の組成そのものが壊れ、全身を不純物が駆けずり回っていきますねぇ」
「要するに死ぬってこったろ。自分がくたばる感想はなんかあるか?」
「生憎とこの人格も、この体も、設計図を基に引かれただけの存在です。私が得た情報は私に引き継がれ、私が私である必要はなくなる。そう、私とは――厳密には、存在しないので」
男は、最期まで作られた笑みのまま虹色の水たまりの中に沈んでいった。
水たまりは、煙を上げて収縮し、僅か数秒で消滅する。それと時を同じくして、潰してきた虫たちの体液や破片も煙を上げて消滅し、そこにはクレーターのような抉れた凹凸が残る地面だけが残された。
「作られた肉体と作られた人格、幾度のトライ&エラー。壊し、使い潰し、得られた成果だけは受け取ってまた新たな存在を創造する……個の概念が存在しない、結果だけを吸って成長する人形………ちっ、こいつの存在もこいつを作ったとかいう誰かも、胸糞悪ぃんだよ………」
それは『ゴースト・ファミリア』としてか、はたまた『人形師』の美学としてか、心底不愉快そうにヴェルトールは地面に唾を吐きつけた。今の名前も分からない男が言葉通りに人形の類だとしたら、その製造者とヴェルトールは100年の時をかけて語らっても相容れないだろう。
「………オーネストに探りを入れたヤツと、関係あるかしら?」
『アプサラスの酒場』の一件を耳にしていたキャロラインが呟く。通常のファミリアや魔物の概念とかけ離れた力と思想によるオーネストへの敵対行為という意味では、無関係とも思えない。先だっての鎧事件といい、今回のこれといい、これまでにオーネストに襲い掛かった理不尽な災厄とは明らかに性
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