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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
58.第八地獄・死途門界
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前のステイタスを所持している。攻撃力に関しては不安要素があったものの、この問題はキャロラインが抱えていた槍がすべてを解決してくれた。この槍の前にはどんなに防御力の高い冒険者も一般人程度の耐久しか保てない。

「ハァ……ハァ……もう、『三連三角(トライエッジ)』の展開も限界……」
「あたしだっていい加減ガス欠するってば。あぁ〜もう、久々に使うと精神がしんどいのよねぇ……」
『そ〜お?アタシまだゲンキ〜!』
『拙者もまだやれまする』

 普段は使用頻度が低い魔法をフルに使う羽目になったココとキャロラインは肩で息をしているが、それとは対照的に片翼の天使人形――ドナとウォノはたちは元気だ。
 むしろ魔石のエネルギーがある限り半永久的に動き続けられる彼らがいたからこそ何とか戦いになったと言ってもいい。
 もしこの人形を複数製造することが出来れば。
 魔法によって性質を複製することが可能なら。
 等身大の人間サイズで製造することが出来れば。
 自ら人形を作り、自ら魔石を調達する知能を持っているのならば。
 もしそうならば、それはファミリアどころか世界のパワーバランスを崩壊させる。

「………これは大きな誤算でしたね。ヴェルトール・ヴァン・ヴァルムンク、貴方は例の二人に負けず劣らずの危険だ。『取り込む』べきだった」
「へー、取り込むねぇ……それはアンタのバックにある組織の話か?それとも、その心臓も骨もねぇ軟体の体の中に飲み込むって話なのか?さっきからさぁ、槍の先から伝わる振動が均一過ぎるんだよなぁ……てめー、生物学的な意味での人間じゃねえだろ?滅茶苦茶硬いスライムみたいだ」
「あは、当たりです」
 
 男はあっさりと白状し――同時に、ヴェルトールが横向きに槍を薙いだ。
 胸の中心から横一線に刃が光り、薙がれた部分が綺麗に割れる。
 血液は噴出せず、その中には骨も血液も筋肉も内臓も存在しない、悪臭を放つ虹色のどろりとした液体が入っているだけだった。それは、外側だけが人間の形をした、ただの粘性の液体の集合体だった。

 斬ったヴェルトールも、それを目撃したココとキャロラインの背筋にも、戦慄が走る。
 その液体は果てしなく冒涜的で、汚いとか穢れているという言葉では足りない程に異質で異様で呪われた何かだ。世界に存在してはいけない、気持ち悪いという言葉が物質になるまで幾重にも重なり続けて圧縮されたような、何かだった。

「なんなの、こいつ……。こんな魔物なんて先輩からも聞いたことない……」
「そうでしょうねぇ。魔物ではありませんからねぇ」
「アタシいろんな男を抱いてきたんだけど、全身液体で出来てる種族なんて聞いたことないわよ……!!」
「そうでしょうねぇ。人間ではありませんからねぇ」
『人の姿をしているのに人に非ざるとは、
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