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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
58.第八地獄・死途門界
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 アズが倒れた時間とほぼ同刻――59階層通路。


「おや――おや、おや。おや」

 自らの胸から生えた鋭く幅のある刃をじっくり10秒ほど観察した男は――後ろに立つ『人形師』に表情だけが愉快そうな顔を、180度回転した首で向けた。人体の構造を無視した動きに刺突の犯人――ヴェルトールは「うげっ」と露骨に眉をひそめた。

「おかしいですねぇ、僕の公算によるとこの子たちが空を飛べばレベル6級の集団にも被害を及ぼすことが可能だった筈ですが――どういう了見で?」
「教えるかバカ。ていうかこっちみんな気持ち悪い。喋らなくていいから死んでちょ。あとおまっ、近づくと本当に臭いなっ!」

 仮にも猫人であるために人並み以上の嗅覚を持つヴェルトールに、男は無言で口から『万物溶解液(アルカエスト)』を吐き出した。ヴェルトールは顔面からその液体を浴びるが――まるでコーティングが施されたかのように液体はすべて弾かれ、地面に零れ落ちてダンジョンの床に穴を空けた。
 ……尋常じゃなく臭かったのか、ヴェルトールの眉間の皺がぎゅっと狭まった。

「悪いけどそれはもう効かないよん。液体はただ液体、俺にとってはもう臭いだけのものだ。物質を溶かすことは出来ても魔力やその構築式、精霊の加護みたいなものを破壊できるワケじゃないからな」
「なるほど、理屈は簡単……あのお人形さんの相殺結果『奇魂(くしみたま)』ですね?しかしあれはお人形さんの周囲にしか展開できないと思っておりましたが――?」
「ま、今週のビックリドッキリ技ってなわけだ。こっから先は企業秘密でね」
「成程、理屈ではなく事実こそが重要ですね。とても参考になります」
「参考にせんでいいから死ねっての。何おたく、今巷で大流行のリアル殺しても死なないタイプ?」

 男の体液もすべて『万物溶解液(アルカエスト)』であるという推測に基づき、既に対策は講じてある。そのためのヴェルトールであり、そのための槍――アズが戦利品に持っていたステイタス防御貫通槍だった。

 『ゴースト・ファミリア』黒竜討伐非参加メンバーと襲撃者の戦闘はかなり難しい局面を乗り越えつつあった。

 触れれば死する『万物溶解液』を内包した虫の波状攻撃に最初は苦戦を強いられた一行だったが、ウォノの展開する相殺結界によって液体の命中を弾き、更に魔法で攻撃が可能という事実が判明してからは一進一退の攻防に転換。
 そして局面を打開するためにヴェルトールの隠し技能――人形のスキルをまるっきり真似できるというある意味反則的な裏技を用いて謎の男の背後に辿り着いたのだ。相手を生かすか殺すかという迷いもあったが、ブレインであるこの男を始末しなければ自分たちが死ぬと判断したヴェルトールの動きに迷いはなかった。
 彼は元々技術力と速度だけならレベル5寸
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