巻ノ六十三 天下統一その二
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「その様にな」
「では」
「その様にだ、そしてじゃ」
「そのうえで」
「助五郎殿もじゃ」
氏規、家康の旧友である彼についても言及した。
「間違いなく兄君を庇おうとするが」
「しかしですか」
「助五郎殿は何も悪いことをしておらぬ」
その家康に対して言った。
「だからな」
「処罰はですか」
「せぬ」
確かな声で約束した。
「その様にな」
「それでは」
「助五郎殿もそうする、そして」
「そしてとは」
「忍城ではまだ戦が行われているそうじゃな」
秀吉はこの城のことをだ、家康に問うた。
「そうじゃな」
「はい、どうやら」
「よくもここまで戦った」
まさにというのだ。
「甲斐姫という姫が随分と働いているというが」
「その様です」
「強く、しかも」
こうも言った秀吉だった。
「大層美しいという」
「そこでそう言われますか」
「おなごはよい」
先程とは違い好色そうな笑みだった。
「だからな」
「やれやれですな」
「ははは、徳川殿も好きであろう」
「確かにそうですが」
「わし程ではないか」
「そう思いまする」
家康は秀吉をやれやれといった目で見つつ答えた、とはいってもその顔は呆れているのではなく温かいものだった。
「関白様は昔からそうですな」
「おなごはな」
「好きで、ですか」
「こちらはこれ一本じゃ」
「おのこには興味がなく」
「そちらに興味はない」
それも一切というのだ。
「右府様とはそこが違う」
「あの方はそちらも好きでしたからな」
信長はこのことでも有名だった。
「まあそれがしもそちらの趣味はあまり、ですが」
「そういえば徳川殿もな」
「そちらはそれがし自身はです」
「家では盛んでも」
「興味はありませぬ」
一切、というのだ。
「おなごだけです」
「そうじゃな、しかしか」
「関白様は少し度が過ぎておるのでは」
「これでも他人の妻やおなごには手を出さぬ」
そうした節度は弁えているというのだ。
「決してな」
「それはそうにしましても」
「わしの女好きはというのか」
「程々がいいのでは」
「そうは言っても好きでありじゃ」
そしてというのだ。
「子をなしたい」
「捨丸様だけでなく」
「より多くの子が欲しい」
切実に言うのだった。
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