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非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜
第37話『恩人』
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『恩人』だなんて、かつて言われたことがあっただろうか。少なくとも、現存する記憶の中には入っていない。

晴登は静かに口角を上げ、その事実に苦笑。自分はホントに普通の人生を送ってきたのだなと、痛感する。

するとユヅキは、極めつけの一言を呟いた。



「ハルト、ありがとう」



嬉し泣きだろうか。彼女の溢した涙が、顔に降ってくる。
それを真に受けながら、晴登もまた口を開いた。


「こっちも同じ気持ちだよ。当ても無くさまよっていた俺に、ユヅキは場所を与えてくれた。それこそ、感謝の気持ちで一杯だ。・・・ありがとう」


最後の単語を言うのも、少し恥ずかしい。でも、感謝を伝えることに恥じていてはダメだ。

上を向き下を向き、互いに互いの目を見据えて感謝を伝え合う。



──刹那、ユヅキが晴登に顔を近づけてきた。目を瞑り、口先に意識を集中している。
そして・・・



「ちょ、顔近い」

「あぅ」


赤面した晴登の右手によって、その行為は阻まれた。
晴登は眼前に迫るユヅキの顔から目を逸らし、申し訳なさそうにそう言う。彼女の行為の意図は掴めなかったが、女の子が近くにいるだけでも照れるというのが男の子なのだ。

ユヅキは自分を阻害した右手を忌々しそうに見つめるが、すぐにホッとした表情をする。そして、両手で涙を拭った。
晴登はその様子を見ると、笑みを溢す。

やっぱり、泣いているより、笑っている方が断然良い。

ただ晴登は内心、何か良いチャンスを逃した気がする、とだけは思っていた。


「あ、そうだハルト。もしよかったら・・・明日、一緒に入る…?」

「いや、遠慮しておきます…!」


その後、思いついたように危険な発言をするユヅキに、晴登は更に顔を真っ赤にしながら返答した。

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