帰郷-リターンマイカントゥリー-part6/偽りの婚約者
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ルイズは、中庭にある小舟の上に毛布をくるませながら隠れていた。
子供の頃、魔法がロクに使えなかったために両親やエレオノールから叱り飛ばされた時はいつもここに隠れていた。この小船の位置は屋敷からだと死角になって見えない。だから今まで一度も見つかったことがないのだ。…あの、後に裏切り者となるワルド以外には。
婿を取れば落ち着く。父はそう言ったが………今のルイズにとってこれほど思い違いな発言は聞いたことがなかった。好きでもない男を押し付けられて、どこのどいつが落ち着けるというのだ。たとえ自分以外の女がそうであっても、少なくとも自分はそんな気はまっぴら起きない。もし、この世で最も安らぎを自分にもたらしてくれる男がいるとするなら…。
「…サイト」
思わず、自分の使い魔の名前を口ずさみ、その意味に気付いたルイズは思わず首をぶんぶん振り回す。
違うもん!あいつのことなんてそんなんじゃ…そんなんじゃ…。
そんなことより、今後の自分の身の振り方だ。アンリエッタは自分を必要としてくれている。そのためにも虚無の力を使わなければならない。でも、家族から結局自分が戦いに出向くことを許してもらえなかった。虚無の事を、話したところで信じてもらえないのだから。
自分が危険なことを承知で、無断で国家間の戦い、怪獣や侵略者との戦いに身を投じていたことは確かに、心配をかけてしまったと思っている。でも、それ以前にあの人たちは自分のことをわかってくれていないのだ。いや…『わかろうともしていない』のだ。少なくともカトレアだけは理解を示してくれると思うが他の三人は、父と母、そして一番上の姉はそうではない。同じ家族だというのに、そんなのおかしいではないか。
ずっと昔から変わっていない。虚無に目覚めても、理解してもらうこともない。未だにあの人たちからすれば、私はまだ『小さなゼロのルイズ』のまま…いや、この先もずっとそのままなのだ。
そして、自分を一番傍で見てくれている男は、別の女のことを気にかけてばかりだ。そして自分は、そんな彼の優しさを、『あちこちでふらふらする犬』と決めつけて癇癪をまくばかり。
「…もう嫌」
何もかもが嫌になってきた。誰も自分を見てくれていない。一人ぼっちなのだ。……もうここでずっと、何もしないままじっとしているのがいい。誰も自分を認めもしなければ見てもくれないのなら…。
そんな時だった。
「ここにおられたのですね。ルイズ様」
「!」
見つからないとばかり思っていた場所で、突然名前を呼ばれてルイズは思わずぎょっとして毛布から顔を出して起き上がる。視線の先には、父が自分に押し付けてきた婚約者、フレデリックが小舟を繋いでいた小さな桟橋の上に立っていた。
「こんなところで、お一人でいかがなされたのです?」
「…あなたには関係ないわ」
「つれないですね。私はあ
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