帰郷-リターンマイカントゥリー-part6/偽りの婚約者
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倒して学院に戻ろうぜ」
サイトはそういうが、ルイズはすぐに彼から視線を背けた。
「無理よ…もう行けないわ」
「はぁ?」
「だって…私、自分の家を捨てようだなんて言ったのよ。公爵家の娘なのに、自分の家を疎ましく思うなんて、貴族の恥だわ。しかもそのせいで、ちい姉様が…」
サイトはルイズのちい姉様と聞いて、一部が崩れてしまった屋敷を見る。あの位置はカトレアの部屋だ。さっきのルイズの軽率な言動を、セミ人間はわざと行動に移してルイズを追い詰めたのだと、サイト=ゼロは悟り、セミ人間への怒りを募らせる。
ルイズは自己嫌悪を続ける。
「こんな私がいったいこれから何のために頑張るっていうのよ。
こんな私じゃ、姫様の汚点にしかならないじゃない…。
それに…たとえ頑張ったって、家族に虚無の事を話せない。家族からはいつまでたっても『ゼロのルイズ』のままで、誰も認めてくれないじゃない。
私みたいな女なんか、どこへでも消えてしまえばいいのよ…」
「…ったくこいつは…」
しかし今回のことを抜いて考えても、ルイズは意地っ張り故にすぐにいじける傾向がある。サイトはため息を漏らしてルイズの頬を両手でつかんで自分の顔を見せるように、彼女と目を合わせる。
「ちょ…!」
まるでキスをしてきそうなサイトのいきなりの行動に、ルイズは思わず胸が高鳴ったが、すぐに「ちょ、離してよ!」と喚くが、サイトは構わずに続けた。
「たとえ世界中の誰もが認めなくても、俺が認めてやるよ。俺がお前の全部を肯定してやる。もしお前が間違いを犯したら、俺が止めに行ってやる。だから立てって」
思わずその男気あふれる台詞にボーっとしかけたルイズだが、ヴァリエールに連れ戻される直前の、サイトとハルナの二人きりのやり取りが蘇って、すぐにそれを信じられない自分が出てきた。
「嘘つかないで!!何が認めてやるよ!」
どうせ、自分みたいな胸も心も背も小さい女の子なんかより、ハルナやシエスタのような、女の子らしい女の方がいいに決まってるだろう。ルイズは伸ばされたサイトの手を振りほどこうとするが、それでもサイトは離さない。
「本当に俺のご主人は馬鹿だな」
「な、誰が馬鹿よ!」
さっきよりもじろっと自分の目を睨むように見つめてくる。
「な、何よ…!」
「ルイズ、俺はもう失うのはたくさんだ。ましてやこの世界に来てからずっと一緒だったお前が、こんな形で俺の前から消えるなんて納得できるか…」
地球では、どこにでもいるただの高校生だった。普通に生きて、適当に就職して…、どこかの誰かと結婚して家庭を築いて、その子供たちも成長したら残りの人生を天寿を全うするまで費やす。そんなふうに生きるはずの普通の人間だった。でも……サイトは幾度も怪獣災害に見舞われる世界で生まれた故、誰もが望むであろう普通の生活さえもできなかった。
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