第189話 都を臨む
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正宗は呂布を下し虎牢関を突破した。その数日後には反董卓連合軍を都から約六十里(約二十五キロメートル)地点に進めた。三十万の軍勢が皇帝が住まう都を威圧する光景は都の周辺に住まう者達に不安を与えた。そして、その軍勢の盟主が正宗であることが知識階級の者達に皇帝の権威が凋落していることをまざまざと印象づけさせた。その理由は正宗が勅命により逆賊とされたにも関わらず、大義を唱え諸侯を従わせ大軍勢を率い都に迫っているからだ。
「朝廷に差し向けた使者は着いたころか?」
騎乗する正宗は隣に控える揚羽に声をかけた。彼の両隣には左から揚羽と冥琳が騎乗して控えていた。揚羽の隣に朱里がいた。
「はい。橋元偉殿には頑張っていただきましょう」
揚羽は言葉と裏腹に感情は籠もっていなかった。使者として出向いた者は?州東郡太守・橋瑁だった。彼は反董卓連合結成のための檄文を書き上げた人物である。
橋瑁を使者に立てることを推薦した人物は揚羽である。しかし、推薦を受けた橋瑁も喜んで引き受けた。橋瑁は初戦の虎牢関攻めで一方的な完勝を治めた反董卓連合軍に同行し、軍勢の勢いを肌で実感した。そのせいで気持ちが大きくなったのである。
戦時下の使者は本来は危険な役であるが、反董卓連合軍の勢いがあれば董卓側も使者に粗相を働く訳がないと橋瑁は高をくくったに違いない。
橋瑁の見立ては正しい。使者を害すれば、その後に待っているのは徹底抗戦しかない。古来より洛陽は守りにくい都市である。戦に疎い橋瑁でもそれくらい理解していた。三十万の軍勢に洛陽が攻められれば董卓側はひとたまりもない。
正宗が認めた書状を預かった橋瑁は使者として都に出向いた。その書状に書かれた降伏条件は四つである。
一つ、董卓、段?、賈?の自決すること。
一つ、皇帝陛下と弘農王の身柄を明け渡すこと。
一つ、董卓軍と禁軍の武装解除を無条件で行うこと。
一つ、劉正礼を逆賊とする勅を取り下げること。
この条件は揚羽・冥琳・朱里・桂花の献策によるものだった。この内容を董卓側が飲むとは正宗は微塵も思わなかった。
「洛陽に籠もり続けるとは思えません。多少の軍事の知識があれば洛陽を守城とすることの愚は理解できることです」
冥琳は正宗に懸念を口にした。朱里も頷いた。
「何かあるならいずれ動きがあるはずです」
揚羽は涼しい顔で冥琳と朱里に言った。
「私は長安に撤退すると見ています」
「その可能性は十分にありますが、兵を分ける必要はないと思います。こちらは数の利を十分に生かすべきです」
朱里が喋ると揚羽が今は動くべきでないと言った。
「長安を先に落とし敵を追い込みたいところだが、向こうには皇帝陛下がいる。追い込みすぎて皇帝陛下を害されては堪らない」
「そうですね
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