424部分:第五十八話 高山にてその六
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第五十八話 高山にてその六
「下手したらそれこそ」
「とんでもない場所で戦うってことに」
「その通りだ」
ミロの考えていることは彼等が考えていることと同じだった。むしろ彼等が考えていることがミロと考えていることと同じなのであった。
「今回はな」
「何かここは戦いやすそうですけれどね」
「そうだな」
青銅の者達は周りを見回した。ここは地形も穏やかでありそれなりに広い。確かに戦いやすそうな場所ではある。
しかしだった。周りは山である。彼等はそこを見ても言うのだった。
「ですが。何か」
「この山がやばいですね」
「だよな。高い場所を抑えられたらそれこそ」
「まずいな」
その言葉にも言葉を出す顔にも危惧するものがはっきりと浮かび上がっていた。
「じゃあミロ様」
「場所を変えますか?」
「こことは別に」
「何処か他の場所で」
「いや」
しかしであった。ミロはここで言ったのだった。毅然とした声の色で。
「決めた」
「決められたのですか」
「それは一体」
「戦う場所はここだ」
白銀の者達の言葉に応えたのである。
「ここで戦うこととする」
「そうですか。ここでですか」
「この盆地で」
「その通りだ。まず食事を終える」
そのうえでこうした指示も出した。
「いいな。まずは食え」
「はい、わかりました」
「それでは」
「そしてだ。食事を終えたならばだ」
その鋭い言葉が続けられる。
「全員聖衣に着替える」
「そして戦闘態勢にですね」
「入ると」
「そういうことだ。すぐにだ」
しかもすぐにだというのである。
「入るぞ。いいな」
「了解です」
「じゃあ」
すぐに食べるものを素早く胃の中に入れていく。そうしてそのうえで馬達を安全な場所に隠しそのうえで聖衣を着る。完全に身なりを整えたうえで彼等を待つ。
「さてと、それじゃあ」
「何処から来るかですね。奴等が」
「正面からか。それとも」
「後ろからか」
「囲むつもりか」
ミロがここでまた言ったのだった。
「どうやらな」
「囲む!?」
「それでは」
「いや、動くことはない」
他の者が動こうとするそれは制止するのだった。
「それには及ばない」
「ですがミロ様、それでは」
「むざむざ敵に」
「いいのだ。ここは囲ませる」
しかし彼はこう言うのだった。
「あえてな」
「あえて、ですか」
「囲ませるというのですか」
「敵を包囲するのは戦術の基本だ」
これはもう言うまでもないことである。ありとあらゆる戦いにおいて敵を包囲するということは勝利への最短の近道である。完全に包囲することこそ勝利そのものであると言ってもいい。
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