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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百八十九話 信頼と忠誠
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何でもいたします、アンネローゼ様。ラインハルト様に対する私の忠誠心を信じてください」
『有難うジーク。ごめんなさいね、無理な御願いばかり。でも貴方以外に頼れる人は私にも弟にもいないの。許してくださいね……』

「……」
そんな事は有りません。私はお二人に頼って欲しいのです。思わずそう言いそうになった。だが言えばアンネローゼ様はきっとお辛そうな表情をされるだろう。それは私の望む事ではない……。

噂が流れた時期、リヒテンラーデ侯の動き、そして憲兵隊が内務省を一斉捜査……、それぞれは独立した動きではない、連動して動いている。確実に相手はこちらに迫っている。

多分ヴァレンシュタイン元帥はあの事件の真相に気付いた。そしてラインハルト様への遠慮を捨てたという事だろうか? それともリヒテンラーデ侯が独自に動いている? どちらにしろこのままではラインハルト様が危ない。

ラインハルト様は事件とは何の関係も無い。いやあの事件には私達の誰も関与していない。全ては未発のままで終わった。証拠は何も無いはずだ。内務省の人間が私やオーベルシュタイン准将の関与を証言するかも知れないが、現実に何の動きも無かった。言いがかりだと撥ね退ければいい。

多少の疑いがラインハルト様にかかるかもしれないがラインハルト様は無関係なのだ。私のところで食い止める事は可能だ。いや食い止めるのだ。そのためにはやはりヴァレンシュタイン元帥が邪魔だ。

元帥がいれば、軍の指揮官は元帥とメルカッツ提督で十分だと皆が考えるだろう。しかし元帥がいなければ後任はメルカッツ提督かラインハルト様のどちらかから選ばれる。メルカッツ提督は先日のフレイア星系の制圧でもシュターデン大将の艦隊を見逃す等、失態を犯したばかりだ。

今の時点でメルカッツ提督とラインハルト様のどちらが司令長官に相応しいか。皆悩むだろう。たとえメルカッツ提督が司令長官になってもラインハルト様を排除できるだろうか。

躊躇するだろう。万一のために温存するのではないだろうか? いざという時はアンネローゼ様にもお力を借りる事になるかもしれない。しかしラインハルト様が罪を免れる可能性はかなり高いはずだ。

ヴァレンシュタイン元帥さえいなければラインハルト様がこの帝国に恐れる相手はいない。一時的に不利な状況になっても十分に挽回は可能だ。躊躇わずにやるべきだろう。ラインハルト様を守るために……。




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