第11話『異端の烙印〜ガヌロンからの招待状』
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「それは……」「そんなことをしたら……」
ティッタが、バートランが、口々につぶやく。
「仕方がない。また流浪者に戻るさ。内乱にめどが付いたら、何とか顔だけは出すようにする」
そのように凱は明るく振舞おうとするが、やはり重苦しい空気は薙ぎ払えそうにない。
「……すみませぬ……ガイ殿。この老体一人で済む問題なら……」
「バートランさんもそんなこと言わないでください。それに今回は異端扱いです。あまり俺に肩入れすると、家族や関係者にも嫌疑がかけられる」
「ガイ殿!私はあなたと共にいきますぞ!」
今の話で同情したのか、感情極まってルーリックが鬼気迫る勢いで言う。
「ちょっと待てよルーリック。君はライトメリッツの中核じゃないか。君がいなくなったら戦姫様とティグルの支援はだれがやるんだよ」
冗談でもそうでないにしても、誰一人ついてこられてはまずい。凱はそう言った。
「それは……」
「それに、戦姫様もティグルもこれから戦う相手は強敵ぞろいだ。今以上に大変になるんだぜ」
ルーリックは思いとどまり、歯ぎしりする。
そして、バートランが何か思い立ったようにつぶやく。しかし、その口どりは何処か重々しい。
「ガイ殿……そなたの力なら、テナルディエ軍を追い払った力を使えば、そ奴らも恐れる必要などないはず……」
ドナルベイン一派を、ヴォジャノーイを、テナルディエ軍を蹴散らした勇者の力なら、何の問題もないではないかとバートランが主張する。
「バートランさん。我を通す為に力でねじ伏せる……それではテナルディエ軍とやり方は変わりません」
バートランは目を見開いた。彼だけじゃない。ティッタを含む全員が目を見開いたのだ。
「確かに俺はテナルディエ軍をねじ伏せた。しかし、命まで奪わなかった。戦って勝つとか、倒して奪うとか、だからといって、テナルディエ軍にアルサスを奪わせる気なんてないけど……」
どこか矛盾した言い方に、皆は凱の言葉に少し混乱した。それからルーリックに視線を合わせ、凱は言葉を紡いだ。
「多分、戦姫様は俺を警戒、侮蔑してるんじゃないかと思ってる……「殺さず」なんておかしいことをしたのだから」
戦場においては、全て生命の礼儀作法に関わってくる。
奪ったのなら、生命を以て償うべきで――
奪われたのなら、生命を以て取り戻すべきで――
自分を守りたいなら、相手を否定する。
でも、凱のやり方は、どっちも守りたいという子供じみた理想論だ。
「ガイ殿?まさか」
ルーリックは、凱の言いたいことがなんとなく理解できた。
(知らず知らずのうちに、俺は彼女の『これまで』を否定してきたのかもしれない)
この時、ルーリックの脳裏には、
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