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魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者
第十九話 派遣任務 5
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普段、訓練でボコられ、軽口を叩いてはゲンコツをもらっている上司が、フェンス越しとはいえ側にいる。
しかも、美人でスタイルが良いとなれば、緊張しない方がどうかしている。
おまけにアスカは年上趣味。お姉さんには弱いのだ。
「しかしなんだ。それでは話づらいだろう。90°だけこちらを向く事を許可しよう」
余裕を見せたい割に、この手の事は結構ヘタレのシグナム。
こっちは見るなよ、と暗に言っている。
(ギリギリ見えるか見えないかぐらいか?よけいにヤラシイよ、それは)
そう思いつつも、アスカは言われた通りピッタリ90°だけ向き直った。
具体的には、肩がシグナムの方に向いている事になる。
そこでアスカはふと思った。
(これって、副隊長と一緒に風呂入っているって事…)
そう思った途端、心拍数が跳ね上がった。
視界の隅に、チラリとシグナムが見える。
少し離れているが、上空から見たらシグナムと肩を並べているように見えるだろう。
「あ、あの、それで副隊長?お話と言うのは?」
身悶えするような感覚を誤魔化すように、アスカはシグナムに尋ねる。
アスカからはシグナムの表情は見えない。ほんのちょっとだけ視界の隅っこに見えるだけである。
だからアスカは気づかなかった。
この時のシグナムが、真剣な表情をしていた事に。
シグナムは何の前触れもなく、己の疑問に思っている事をアスカにぶつけた。
「お前、以前に地球で何かあったか?」
「!!!!!!!!!!!!!!!!」
ビクッ
アスカが身を震わせた。
顔は強ばり、目は見開いている。明らかに動揺している。
「……」
まさか、こんなに過剰反応するとは思わなかったシグナムは言葉を失ってしまった。
「……何の事でしょうか」
まるで絞り出すように答える。抑えているつもりなのだろうが、その声は震えている。
「……いや、何となくそう思っただけだ。気にするな」
アスカの反応を見て、シグナムは彼が過去に地球のきた事があると確信した。だがそれは、恐らく簡単に触れてはいい物ではないらしい。
(どんなトラウマがあるのかは知らんが、これ以上はアスカを傷つけるだけだろう…上司として、不甲斐ない)
シグナムはもっと慎重に話すべきだった、と後悔する。
しばし、沈黙が周囲を支配した。
「……あー、なんかのぼせたみたいです」
アスカは急に立ち上がってシグナムに背を向けた。
「なっ……!」
突然の事に、シグナムは頬を赤くして視線を逸らす。
「先に上がってますんで、副隊長はごゆっくりどうぞ」
返事を待たずに、アスカはさっさと露天風呂を後にした。
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