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トシサダ戦国浪漫奇譚
第一章 天下統一編
第二話 新生活
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。治胤の一族、大野家は浅井家臣の家柄である。だから、主君筋の浅井の姫である茶々には思い入れがあるのだろう。



「卯之助、こんなとこに居たのか」

 俺と治胤が会話をしていると秀清が現れた。秀清は額の汗を手拭いで拭くと、それを首にかけながら俺に声をかけてきた。

「小出殿、では私はこれで失礼させていただきます。それとこれをお受け取りください。殿下から引越の祝儀にございます」

 治胤は懐から紫の絹地に包まれた小さな包みを俺に差し出した。俺はそれを考えなしに受け取るとずしりとした重量だった。俺は視線を包みに落とす。この重みは間違いなく金、小判だな。秀吉からということは屋敷の件をやはり気にしていたのだろう。これで引越に来てくれた皆にごちそうが振る舞えそうだ。俺は自然と笑顔になる。

「殿下には有り難く頂戴いたしますとお伝えください」

 治胤は頷き俺に頭を下げ、通り縋りに秀清に会釈をして通り過ぎた。すると秀清も治胤に会釈した。

「あの男は誰だ?」

 秀清は俺の側に来ると開口一番に治胤のことを聞いてきた。

「義叔父上、大野修理様の弟、大野治胤殿です」
「大野修理様の弟か。ちゃんと挨拶をしておくべきだったな」

 秀清はしくじったという顔で治胤が去った先を見ていた。その方向から荷車を引く人足達がぞろぞろと入ってきた。その後ろから侍女達も着いてきていた。荷車には俺の荷物が積まれている。俺の荷物の大半は書籍が占める。その書籍の大半は兄・木下勝俊から貰ったものだ。俺を風流人と言った人でもある。

「大野殿はそんこと気にしないと思います」

 俺の言葉を聞き秀清は笑顔になる。

「断言するのだな。大野治胤様と仲良くできそうか」

 秀清は笑顔で秀清の問いに頷いた。

「卯之助、先輩達とは仲良くしていた方がいい。しかし、聚楽第から殿下の早馬が来た時には驚いたぞ」

 秀清は意味深な笑みを浮かべた。

「知行は幾ら貰ったのだ」

 秀清の質問は直球だった。

「五千石です」
「ご。五千石。卯之助、それは真なのか?」

 秀清の声は震えていた。
 俺も最初は驚いた。義父より知行が多い。義母は影で癇癪を起こしそうだな。

「義叔父上、これが朱印状です」

 俺は懐から知行安堵状を取り出し秀清に見せた。秀清は食い入るように知行安堵状を何度も繰り返し読んでいた。

「道理で屋敷がでかいと思った。卯之助、やったじゃないか」

 秀清は納得した様子で数度頷くと俺の方を見て笑った。彼は心底喜んでいる様子だった。

「卯之助様、秀清様」

 人足達が俺と秀清に声をかけてきた。引越の指示を待っているのだろう。秀清は引越の荷解きを終えていないことに気づく。彼は慌てて人足達と侍女
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