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トシサダ戦国浪漫奇譚
第一章 天下統一編
第二話 新生活
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の下で働くことを指して言っているのだろうと何となく分かった。

「そう言えば。私の上司になる石田様はどのような方なのでしょう」

 俺の質問に対して治胤は腕を組み思案していた。そして、彼は石田三成の人物像について考えがまとまったのか口を開いた。

「小出殿、私が言ったことは黙っていてください」

 治胤は話をする前に俺に口止めをしてきた。俺は他人に喋るつもりなどないから治胤に肯定の意味で頷いた。

「石田様は気難しい方です。ですが、仕事はできる方だと思います」

 治胤の話は俺の知っていることと、それほど乖離していなかった。歴史の記録は時として時の為政者によって捏造されることもあるから歴史を鵜呑みにせず、得られる情報と俺の知る歴史を擦り合わせて間違いを修正していった方が今後の俺のためになる。

「でも槍働きは噂通り得意じゃ無いんですよね?」

 俺が何気なく呟いた言葉に治胤は表情を固くした。
 俺は何かまずいことを言ったのだろうか。
 治胤は咄嗟に周囲を見回した。ここに俺と治胤以外の者はいない。それでも条件反射で周囲を気にするとは、それだけ治胤にとって石田三成は苦手または恐ろしい存在なのだろう。朝鮮征伐で軍監として赴き賄賂を要求したり報告を捏造し同僚を不当に貶める人間だから恐ろしい人物ではあると思う。

「小出殿、その話題は石田様の前では禁句です。ご当人は気にしていないと仰りますが凄く気にしています。石田様の下で働くなら、このことは注意しておいた方がいいです」

 石田三成に会う前に聞いておいて良かった。治胤から聞いた話と治胤の様子から察して、石田三成はかなり面倒そうな人物であることは確かのようだ。歴史でも石田三成は豊臣系大名から蛇蝎の如く嫌われ殺意を抱かれていた。その上、人望は最悪で忠臣でもない。彼の忠臣という印象は徳川家康が豊臣家を滅ぼしたことからくる結果論でしかない。彼は権力争いの果てに失脚し、復権を狙い武力よる政変を引き起こし破滅しただけだ。そんな時勢を読めない者は仕事ができようと愚か者だ。

「大野殿、わざわざ教えていただきありがとうございます。心しておきます」

 俺は治胤に礼を言った。その後、この際だから俺は治胤から情報を引き出しておくことにした。こんな二人だけで会話する機会は今後あまり無いからな。

「大野殿の母上は浅井の姫様の乳母とお聞きしております。大野修理様は乳兄弟ということですね。浅井の姫様はどのような方なのでしょうか?」

 俺は治胤の母のことを大蔵卿局(おおくらきょうのつぼね)とは呼ばなかった。現在の茶々は秀吉の側室で、彼女の側近である治胤の母が大蔵卿局と呼ばれているか分からなかったからだ。俺のような宮仕えしたばかり小僧があまり詳しすぎると変だから、敢えて茶々のことを浅井
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