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トシサダ戦国浪漫奇譚
第一章 天下統一編
第二話 新生活
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とにしておきましょう」

 治胤は爽やかな笑顔で愛想よく俺に返事した。俺は努めて平静を装い治胤の言葉を聞き流した。



 俺と治胤がたわいもない世間話をし歩いていると、治胤が大きな屋敷を指さした。

「小出殿の屋敷が見えてきました。あれがそうです」

 遠眼からもその大きさが分かる。治胤が指さす屋敷は義父の屋敷より間違いなく大きい。
 屋敷の門前に俺と治胤が到着すると俺は屋敷を見回した。屋敷は真新しい。聚楽第が完成して三年くらいだから当然といえた。俺が住んでいた義父の屋敷も規模と作りはかなり違うが真新しい屋敷だった。
 俺一人で住むには随分でかくて立派な屋敷だな。俺は屋敷の塀やら門を見回し人気を感じないことを確認すると門を潜った。俺の思った通り人気はない。

「私達の方が早かったようですね」

 俺の後を追うように治胤が門を潜ってきた。治胤は屋敷の玄関に進み周囲を見回す。屋敷の外からでも人気を感じなかったから予想通りだった。秀清達は今頃開いた荷物を荷車に積み直し、この屋敷に向かってきているのだろう。

「大野殿、わざわざありがとうございました。後のことは大丈夫です。もう少しすれば家の者達もくることでしょう」

 俺はやんわりと治胤に「もう帰っていいぞ」と言った。治胤も仕事中だろうから、さっさと帰りたいだろう。俺は治胤とあまり仲良くするつもりはない。だが、情報は引き出したい。主に茶々と石田三成の人物像を詳しく知りたい。歴史で知る二人とどれ程違うか確かめて置く必要はあるからだ。でも、今日は疲れたから、秀清が来るまでのんびりしたい。

「私のことはお構いなく。小出殿の引越が滞りなく終わるように差配することが本日の私の仕事です。ここで待たせていただきます」

 俺の思いとは裏腹に治胤は爽やかな笑顔で返事した。俺は治胤に少し苛立つ。こういう空気を読めない奴は好きになれない。でも、治胤の言い分は一理あるから俺は引き下がることにした。

「わざわざ気を遣わせてしまい済みませんね」

 俺は心と裏腹に愛想よく治胤に礼を言った。

「いえいえ気を遣わないでください。これも仕事の内です」

 俺と治胤は笑顔を交わしながら庭の方に移動した。立ったままでは疲れるから、俺は母屋の軒下の廊下に腰をかけることにした。丁度いい整形された長方形の石が軒下の廊下に沿って配置されていたので、それを足場にして軒下に座った。
 俺の横に治胤が腰をかけた。

「いやはや、今日は疲れました」

 俺は手を上げ腰を伸ばし身体を解した。ここまで来るのに半刻(一時間)位はかかったと思う。遠眼に聚楽第の天守が見える。良い眺めだな。

「明日はもっと疲れると思います」

 治胤は俺を見て苦笑していた。彼が言いたいことは俺が石田三成
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