第一章 天下統一編
第二話 新生活
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いたします」
考えれば考えるほど迷惑な話だ。俺は初めの屋敷で構わなかった。だからといって秀吉に直接要求する度胸はない。今日の対面でも感じたことだが、秀吉は自分の命令に対して意見する者を許せない性格なのだろう。「天下人だからしょうがない」と言えばそれまでなんだがな。
お陰で秀清は俺にぼやきそうだ。
秀清とは俺の義叔父・小出秀清のことだ。彼は俺の引越の責任者だ。義父の命令で俺の引越を手伝うことになるが快く引き受けてくれた。その時、俺に「引越祝いに酒でも奢ってくれ」と注文を出してきた。ついつい「引越祝いは義叔父上が私に渡すものでしょう」と突っ込んだら「上手い酒を飲ませてくれ!」と笑いながら俺の指摘は無視していた。二日前の出来事だが今でも鮮明に覚えている。
秀清は小出家の中では俺が胸襟を開いて話せる数少ない人物だ。それは秀清が義祖父の妾の子で、庶子という身の上であることも関係しているのかもしれない。その秀清は義父の家臣として義父の補佐をしている。傍目から見て義父より秀清が優れていると俺は内心思っている。その証拠に義父の家臣は秀清の方を頼りにしている。
聚楽第を出てから四半刻(三十分)位歩いた頃、俺は秀吉から受け取った知行安堵状を取り出し目を通した。何度見ても俺の名と知行五千石を安堵すると書かれ朱印が押してある。五千石か。今後の苦労は気が重いが嬉しい。つい顔がにやけてしまう。
「小出殿が羨ましいです」
俺は平静を装いながら、知行安堵状を折りたたみ油紙に包むと懐に仕舞う。早速、胡麻すりきたかと内心思った。
「五千石くだされるとは。いやぁ殿下は太っ腹ですね!」
俺は嫌味が無いようにテンション高めに話した。
「そういう意味で申したのではありません。小出殿の聡明さが羨ましいと申しました。私は殿下と小出殿の会話についていけませんでした」
治胤は俺を見ながら苦笑した。滑ってしまった。超恥ずかしいじゃないか。
「大野殿、買い被り過ぎです。たまたま黒田様の考えと私の考えたことが同じだっただけです。まぐれ当たりですよ」
俺は大袈裟に慌てた素振りで治胤の俺への評価否定した。秀吉が想像以上に俺を高く評価したことで治胤も俺に一目置いたようだ。それか、今後の有望株と仲良くしておこうという考えかもしれない。
後者だろう。
治胤の素振りからして前者の可能性も捨てきれないが、治胤の人物像を完全に掴めない内は用心しておいたほうがいい。こいつは大野治長の弟だからな。大野治長も案外不幸と言えなくもない。大野治長は自分の母親が秀吉の側室・茶々の乳母であり、後に生まれる豊臣秀頼の乳母でもあったがために自滅したと言えなくもない。だが、彼の母のお陰で異例の出世を遂げたことは揺るがない事実である。
「そういうこ
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