sts 33 「心の中で」
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容赦のない正拳が俺の顔目掛けて繰り出される。
俺は首だけ傾ける形で回避し、反射的に反撃を繰り出そうと右手に持つ黒剣を振り抜こうとする。が、それはすぐさま停止させて後方へと下がった。左右に持つ剣を構え直すがそれは自分の意思というよりは体に染み込んだ動きに他ならない。
『マスター、どうしたのですか? 先ほどから受け身になって避けるばかり。それでは目の前の敵は倒せませんよ』
俺の中に居るセイが言うことは実に正しい。目の前に居るのは聖王のゆりかご攻略を邪魔する敵だ。聖王のゆりかごが本来の力を発揮できる衛星軌道上に達するまでの時間も残り3時間とないだろう。一刻も早く敵を倒して攻略戦に復帰しなければ……しかし
『分かってる……そんなことは分かってるんだ』
『ならば何故……』
『セイ、あの人はリインフォース・アインス。リインの先代なの』
『リインの先代? あの方が……』
セイが生まれたのは闇の書を巡る事件が終了してからだが、リインの姉貴分のひとりであり、はやてやシグナム達がアインスの話をする機会も多くはないが何度かあった。そのため、アインスがどういう最後を迎えたのかは知っているというわけだ。
『……なるほど、マスターが戦おうとしない理由は理解しました。ですがマスター以外にも多くの魔導師が戦っているのです。マスターだけ逃げることは許されませんよ』
『セイ、言ってることは正しいけどもう少し言い方を考えなさいよ。あの人を助けられなくてマスターがどれだけ悩んで、苦しんで、今日まで頑張ってきたと思ってるの!』
『そんなことは理解しています。……いえ、確かにあの方が消えた日にいなかった私には理解が及んでいない部分もあるのでしょう。ですが……あの方は融合騎であり、私も融合騎です。このような形で現代に呼び戻され戦わされるなど……』
セイの声には悲痛な想いが籠っている。
ファラには及ばないにしろ、セイだって俺と一緒に過ごすようになってもう大分経つ。性格的にも人のことを気遣える奴だ。俺の気持ちだってファラと同じくらいに理解しているだろう。
いや……もしかすると同じ融合騎としてアインスの気持ちを理解できる分、俺よりも苦しい思いをしているのかもしれない。
着々と近づくタイムリミットへの焦りや目の前に居るアインスへの戸惑い、相棒達の不安などに俺の思考は安定さを欠いている。
やることは単純……目の前に居るアインスを打ち倒し、攻略戦と復帰する。ただそれだけなのだ。そう頭では理解しているというのに……俺は手に握る剣に力を込めることが出来ない。
「……その顔立ちに剣捌き。一目見た時からもしやと思っていたが……君はあのときの少年か?」
「――っ……アインス、お前しゃべれたのか?」
「ああ」
アインスの浮かべる笑みは、
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