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おぢばにおかえり
第三十六話 お墓地その九

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 実はこの漫画はかなりのもので全五巻です。作画の方は昔梶原一騎さんという人と一緒に漫画を描いていたとのことです。
「あの漫画も読んだの」
「はい、全巻」
「全巻なの」
「もう読みました」
「ううん、あの漫画まで読むなんて」
「凄いですか?」
「正直言って驚いたわ」
 もう読んでいること自体にです。
「阿波野君も凄いわね」
「じゃあもっと褒めて下さい」
「褒めないわよ」
 少し怒って八重歯を出しました。
「何でいつもそこでそう言うのよ」
「いやあ、何となく」
「何となく調子に乗るから」
 この子の場合はです。
「全く、いつもそうなんだから」
「いやあ、そうした癖性分ですね」
「そんな癖性分はなおしなさい」
 これもおみちの言葉です、よくない癖や性格のことだと思って下さい。簡単にこう言うにはもっと深い意味がある言葉ですが。
「いいわね」
「先輩は厳しいなあ」
「厳しいんじゃなくて普通に言ってるの」
 というか私厳しいって言われたことないです、後輩の娘達からはよく優しい先輩と言ってもらっています。有り難いことに。
「阿波野君はいい加減過ぎるから」
「言うっていうんですか」
「そうかもね」
「僕そんなにいい加減ですか」
「いい加減過ぎるわ」
「まあまあ、それにしてもです」
「都合が悪くなったら話題変えないの」
 私がく言ってもでした、阿波野君はこんなことを言いました。
「本当にここから見る景色は奇麗ですね」
「それはね」
 私も景色については同意でした、教祖のお墓の前から見る景色はおぢば全体のもので神殿もその周りも全部見えます。
 その上から神殿を見て私は言いました。
「私もそう思うわ」
「そうですよね」
「ええ、ただ今思いだしたけれど」
「何ですか?」
「お墓地前も一緒に来たわよね」
 今思い出しました、本当に。
「そうよね」
「あっ、そうでしたね」
「何で忘れてたのかしら」
「色々あったからじゃないですか?」
 一緒に階段を降りながら私に言ってきました。
「だからじゃないですか?」
「そういえば阿波野君と会ってから色々あったわね」
 四月早々に阿波野君と会ってからです。
「何かと」
「楽しい思い出ですよね」
「いえ、全然」
 阿波野君にむっとした顔で答えました。
「手間のかかる子が出来たって感じよ」
「弟みたいな」
「後輩よ」
 このことはちゃんと言いました。
「困ったね」
「あっ、そうですか」
「そうよ、阿波野君みたいな子はじめてよ」
 心から言いました。
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