415部分:第五十七話 遺跡の中でその五
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第五十七話 遺跡の中でその五
「今はわからなくていい」
「そうなのですか」
「今は」
「そうだ。今はわからなくていい」
また言うミロであった。
「美味いかまずいかわからなくてもな」
「そういう考えもあるんですね」
「何ていいますか」
「イギリスとペルーは違うだろうからな」
青銅の者達が言ったところでこんなことも言うミロであった。
「イギリスの料理は何処もかしこも確実に駄目だった」
「まあイギリスはそうですね」
「あの国だけはね」
青銅の者達も苦々しい顔で今のミロの言葉に応えた。実は彼等もイギリスの料理のことは実体験として知っているのである。
「俺一回言ったことありますけれど」
「俺もだ」
「俺二回もだぞ」
「俺なんか五回もだぞ」
「俺も言ったことがある」
そしてミロもだというのであった。
「修行時代にな。いや、あの国はだ」
「そうですよね。何ていいますか」
「酷いなんてものじゃないですよ」
「だがペルーはそうは聞かない」
ミロの今の言葉は毅然としたものであった。
「そうな」
「そうですね。じゃあここは」
「行きますか」
「そうするとしよう」
ミロを先頭としてその店に入った。店はごく普通の、この国の食堂であった。そこに入ると浅黒い肌の者達に一斉に顔を向けられたのであった。
「あれっ、あんた達」
「こっちの人間じゃないな」
「観光客かい?」
「いや、違う」
だがミロはここで身分を隠して彼等に言葉を返すのだった。
「私達は観光客ではない」
「じゃあ何だい?」
「学者さん達かい?随分若い子も多いけれど」
「そうだ」
そういうことにしてしまったのだった。今は。
「我々は学者だ。考古学をやっている」
「ああ、じゃああれか」
「ナスカかい?それとも高原都市かい?」
「アンデスに行く予定だ」
こう彼等に答えるのだった。見れば彼等はそれぞれ実に陽気な顔をしている。ラテン特有の明るさはこの店の中においても健在であった。
「そこにな」
「へえ、じゃあ遺跡派かい」
「インカの」
「そういうことだ。そして今はだ」
学者ということにしてさらに話を続けるミロだった。他の聖闘士達は今は彼と店の客達のやり取りを聞くだけであった。
「ここで食事にしたいのだが」
「ああ、いいぜ」
「どんどん注文してくれよ」
「何でもあるからな」
客達はミロの言葉を受けてこれまた実に明るく言ってきた。
「丁度席もあるし座ってくれよ」
「何人いるんだい?」
「七人だ」
人数についても答えるミロだった。
「七人いる」
「そうかい、七人かい」
「結構多いね」
店の厨房の方からも声がした。見れば太った中年女と彼女とは正反対の痩せた男がいた。どうやら夫婦らしい。彼等
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