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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百八十八話 武器無き戦い
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い表情で迫った。透明な瞳が今は冷たさを浮かべている。大分怒っているようだ。

「帝国は事前に同盟政府に対してフェザーンに軍を派遣することをお伝えした、そうですな?」
「……」

「その際、帝国がフェザーンの中立を犯すつもりも無い事もお伝えしたはずです。それなのに同盟政府は帝国に何の断わりも無くフェザーンに軍を派遣している。背信、いや敵対行為と言って良い」

レムシャイド伯の口調が厳しさを増した。こちらに裏切られたと言う気持ちが有るのかもしれない。トリューニヒトが私を見るが、私にもどうにもフォローのしようがない。この件に関してはレムシャイド伯の言葉に理があるし、その事はトリューニヒトも分かっている。

大体交渉相手を口先で丸め込むのは私よりトリューニヒトのほうがはるかに上手い、私の手助けなど必要ないだろう。どうやってレムシャイド伯を丸め込むやら、お手並み拝見と言ったところだ。

「レムシャイド伯爵、確かに軍の派遣についてそちらに知らせなかった事についてはこちらの落ち度としか言いようが無い。それについては心から謝罪する。しかし、軍の派遣についてはこちらにも事情が有っての事、そちらに対する敵対行為ではないことを御理解いただきたい」

トリューニヒトは誠実そうな表情でレムシャイド伯爵に話しかけた。
「敵対行為では無いと言われるか」
「その通りです。帝国がフェザーンのルビンスキーに対して不信感を持つ気持は分かります。同盟政府も彼には随分と煮え湯を飲まされている」

「……」
「レムシャイド伯、帝国はルビンスキーに反帝国活動を止めさせると言っていますが現実にはルビンスキーの排除という事になると思いますが、違いますかな」
「……だとしたらどうだと言うのです、反対だとでも?」
レムシャイド伯の目が一層厳しさを増した。

「とんでもありません。ルビンスキーを排除するだけというなら、それに対して同盟が反対する事は有りません」
「……」
トリューニヒトが穏やかに話しかけたがレムシャイド伯の表情は厳しいままだ。

「但し、帝国がフェザーンを占拠すると言うのは困ります。我々は同盟市民に捕虜を取り返すためにフェザーンを見殺しにした等と言われかねない」
今度はトリューニヒトの表情が厳しくなった。

「……それで」
「そうなれば同盟市民は捕虜交換よりもフェザーン回廊の確保、あるいは中立化を優先するべきだと言い出すでしょう。先日の共同宣言などあっという間に反古になりかねないのです。お互いにとってそれは不幸な事でしょう」

「関係有りませんな」
「関係無いと?」
「左様、帝国には関係有りません。いまトリューニヒト議長が仰られた事は同盟内部の問題でしょう。同盟政府が自らの力で解決する事であり帝国には関わり無い事です。違いますかな
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