ひだる神
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った。
「何でだ?俺はその神とやらに呪われるようなことはしていないよな」
「あのな、お前な」
二つめの鶏天も勝手に丼に放り込んで、奴は大きく息をついた。
「勘違いしてないか?相手は神だぞ。恨みがあるかどうかで律儀に餌場を替えるかよ」
単に、味を占めたんだよ依代を得ることに。そう云って奴は俺からせしめた鶏天を旨そうに齧った。
「それとも何か?牧場主は邪悪な牛しか屠殺しちゃいけないのかねぇ」
……何だ邪悪な牛って。この玉群神社の奉神といい、信田に憑いた神といい…。
「俺のことは餌としかみなしていなかったのか。神ってのはろくでもないのばっかりだな…」
「はん。お前は今まで食ったパンの数を覚えているのか?」
そう云ってにやりと笑った。うわ、こいつ多分これを云いたかっただけだ。…しかし。
「…お前は、その『神』に話をつけてくれたんだな」
「話なんぞ通じるものか。祟り神なんてレベルじゃない、飢えて狂った神だぞ。そんなのに触手を伸ばされたらもう、逃れようがないんだよ、本来な」
「えっじゃあ俺は!?」
「逃れる手段はただ一つ。『使えない』と思わせることだ。水以外口に出来ない状況を、信田が死ぬまで続ける。すると『どうやらこの依代からは供物が得られない』とみなされ『神渡り』は為されない。もっと長丁場になるかと思ったんだけど、意外に早めにカタがついたねぇ」
カタがついた…厭な云い方をするな。食欲は完全に失せた。間違いなく、俺は『依代』からは逃れられたのだろう。
―――信田亡き後、狂った神とやらはどうなるのだろうか。
「知らんねぇ」
人を見透かしたように、奉が勝手に答えた。
「信田が死ぬ前に、早々にお前を見限って他の依代を探したかも知れないし、腹を空かせたまま何処ぞに消えたかも知れないし…それか」
案外、俺みたいになってたりしてなぁ。そう云って、やると云ってないのに勝手に稲荷寿司の皿を手前に寄せてかぶりついた。
―――あれ?俺…元々、ひだる神に憑かれてないか?
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