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俺の四畳半が最近安らげない件
タブーの在所〜小さいおじさんシリーズ13
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くっくっく…」
「卿らのような『丞相』格は五体満足で葬られただろうがな、武将はそうはいかない。人気が高ければ高いほどな。恐らく俺も、葬られる時は…」
ごにょごにょと言葉を濁して、端正はちらちらと周囲を見渡す。
「だから稀にいるのだ。俺に出会うと妙に気まずげにする輩が。…こんなことになると分かっていれば、遺言しておくべきだったな、我が身を食わせることまかりならぬと」
「ほほう、なるほど」
白頭巾はふっと眉をひそめると、ちらりと豪勢に視線を送った。


「関羽殿と顔を合わせるのは、実は気まずいのですな」


俺の四畳半が水を打ったように静まり返った。
「関羽殿が討たれ、その遺体を魏が預かり…我が国に還って来たのは塩漬けになった首だけ。ご遺体がどのような状況になったのかは、当時の慣習よりお察し致します。猛将として知られた関羽殿のこと…さぞかし、ファンも多かったことでしょう」
「おい、卿、もうその辺で」
「……丞相、貴方もでしょう?」
……うわ、この野郎、とうとう踏み込みやがったよ。
「生前あれだけ欲した名将。その遺体に全く未練がなかったとは…云いますまいな」
こいつは本当にいつもいつも…。くっくっく…と羽扇の陰でほくそ笑む白頭巾の傍らに、すっと豪勢が立った。


「―――何が、悪い」


豪勢は羽扇をむしり取り、白頭巾の襟首を掴みあげた。
「あの男は!!綺羅星のごとき名将を苦もなく手に入れておきながら…こんな…こんっな頭でっかちの糞頭巾なんぞに目移りして関羽殿を僻地に置きっぱなしにしおって…!!徐州太守だと!?そんなの馬超か張飛でも置いとけばよかったのだ!!」
一応って感じで白頭巾の嫁が槍を持って出てきたが、何となく遠巻きに様子を見ている。…最近調子こいてるから豪勢のグーパン一撃くらいはいっかな…という感じにも見える。いいぞ、嫁。
「生きている間に余のものに出来なかったのだ!遺体くらい余のものにして何が悪い!?」
え?え?これ俺たち普通に聞いてていい話?元凶の眼鏡をちらっと見ると、泣きそうな顔で豪勢と玄関を交互に見ている。…チキンかよふざけんな。この事態を招いた責任は取ってもらうぞ。俺は奴の二の腕をぐっと掴んだ。この状況で置き去りにされてたまるか。
「こっこれで関羽殿は余のものだ…そう思って何がおかしい!?とうとうあのインチキ蓆売りから関羽殿を奪ってやった!関羽殿は永遠に余のものだと……」
激高していた豪勢がふいに、あんぐりと口をあけて凍りついた。俺は反射的に『いつもの』襖に目をやる。


キレイな髭のあんちくしょうが、のっそりと立ち尽くしているではないか。


「わっ…ど、どうするのだ卿、本人ぞ、本人出て来たぞ!!」
「いっいやいやいや、その関羽殿…」
関羽は巨体をもじもじと動かし、髭の下
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