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俺の四畳半が最近安らげない件
タブーの在所〜小さいおじさんシリーズ13
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。おいやめろ、おっさん達の表情が見えない。これ怖い。
「関羽が呂蒙に討たれたとき、その遺体を一時的に引き取ったのは何と!!」
「っこら―――!!!」
俺は眼鏡に飛びかかって口をふさいだ。眼鏡はもごもご云いながら咳き込む。うっわ汚ねぇ、唾が飛ぶし掌が濡れるし最悪だ。
「なっ何すか!!俺はただ三国志のオモシロ豆知識を」
「お前まじで出禁にするぞ!?」
この期に及んで全く空気を読まないとは…学生怖ぇ。いや、俺学生の頃こんなだったか?


お前が何を得意がっているのか知らんが吉川英二の三国志読んでる連中には『古代中国では有名武将は遺体を塩辛にされて争奪戦になる』はデフォなんだよ!!


「中国の食はとても広い裾野を持っております…今ほど一般的ではなかったにせよ、胡麻や生姜なども食されておりました」
ハーベストを頬張りながら、白頭巾が呟く。よし、上手いぞ。うまく人肉をスルーして胡麻の話につなげた。
「ときにこの国では『中国人は二本足のものは親以外は何でも食う』などと云われておりますな」


何故そこに戻した!?


「―――いやしかし、云われる程一般的ではない。わざわざ屠ってまで食ったのではなく、非常食的な色合いが」
端正が控えめにフォローに回る。
「非常食としては一般的。我が主も逃避行のさなか、身を寄せた家主に人肉を振る舞われております」
ぶっちゃけたなぁ…有名な話だが。
「うちの王忠も、食ったという話だなぁ…後々までうちの丕に揶揄われ続けたようだが」
若い頃、飢えのあまりに人肉を食べた武将のことか。確かに後々まで曹丕がわざわざ墓を掘り返して馬の鞍に髑髏をくくりつけたりして揶揄ったという逸話が残っている。自分とこの武将を馬鹿にするためだけに他人の墓を暴くあたり、人肉食云々以前に日本とは随分倫理観に違いがありそうな……。
「紂王を始めとする『悪食家』はさておき、余程のことがない限り、貴人は人肉を食さないものでした。しかし」
すっと羽扇で口元を隠す。…厭な予感がしてきたぞ。こいつが羽扇の陰に隠れる時はロクな事が起こらない。
「人気の高い武将が死ぬと、その体は塩漬けにされて配られました。その体の一部を口にすることで、その偉大さにあやかろうという、一種のファン心理でしょう。私には測り兼ねる風習でございましたが」
くくく…と羽扇の陰から忍び笑いが漏れる。


「―――貴人が人肉を口にする、数少ない機会の一つ、でございましょうね」


「ま…待て!!!」
端正が割って入った。豪勢はもう黙りこくったまま、ぴくりともしない。
「正直な話をするぞ…この辺うろうろしている連中は多かれ少なかれ『そういうこと』になっている。分かるな?」
うろうろしている連中ってアレか、小さいおじさんの愉快な仲間たちのことか。

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