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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
殺意と変異
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な無感情な一瞥(いちべつ)を浴びせ、一言だけを口にした。

ビーターのお前が、僕達に関わる資格なんてなかったんだ、と。

「その言葉は、鋼鉄の剣のように俺の心を切り裂いた」

そういうことか。

俺はようやく気づいた。第35層《迷いの森》での《背教者ニコラス》と、74層迷宮区での《グリームアイズ》戦闘時と因果関係があることに。あの時の全力を振り絞った戦いぶりの答えが見えた気がした。

無言でキリトの話に熱中する俺とアスナ。そのうちのアスナが質問をしようと口を開いた。

「……その人、ケイタさんは……どうしたの?」

「自殺した」

椅子の上でアスナの体がピクリと震えた。

「外周から飛び降りた。最期まで俺を呪っていたんだろうな……」

自分の声が詰まるのを感じた。心の奥底に封印したつもりの記憶だったが、初めて言葉にすることによって、あの時の痛みが鮮烈(せんれつ)に蘇ってきた。

キリトは歯を食い縛った。アスナに手を指し伸ばし、救いを求めたかったが、自分にはその資格はないと心のどこかで叫ぶ声がして、両の拳を固く握る。

「みんなを殺したのは俺だ。俺がビーターだってことを隠してなかったら、あの時トラップの危険性を納得させられたはずなんだ。ケイタを………サチやみんなを殺したのは俺だ……」

眼を見開き、食い縛った歯の間から言葉を放り出す

不意にアスナが立ち上がり、2歩進み出ると、両手でキリトの顔を包み込んだ。穏やかな微笑を(たた)えた美しい顔が、キリトのすぐ目の前まで近づいた。

「わたしは死なないよ」

(ささや)くような、しかしハッキリとした声。硬直した全身からふっと力が抜けた。

「だって、わたしは……わたしはキミを守るほうだもん」

そう言って、アスナはキリトの頭を胸に包み込むように抱いた。柔らかく、暖かな暗闇がキリトを覆った。キリトは安心感に寄り添うように(まぶた)を閉じた。

キリトの話から今の光景まで全てを無言のままずっと眺めていた俺は、素気(すげ)()い態度で揺り椅子から立ち上がり、階段に足を踏み入れて1階に降りて行った。

キリトの過去話、2人のやり取りは俺自身の過去まで思い出させる。俺には愛情より、怒りや憎しみといった負の感情のほうが多い。だからこそ《黒猫団》でキリトに起こった出来事には引き込まれる部分もあった。

話を聞いて、キリトが自らの意思でメンバー全員を殺害したわけではないことは理解できた。俺とは違う。俺は自分の意思で彼らを殺したのだから。この罪を償うには、死ぬまで戦い続けるしかない。











翌日の朝、キリトは派手な純白のコートに(そで)を通すと、アスナと連れ立って55層《グランザム》へと向かった。

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