第7話 『百聞は一見にしかず』な、ナナミの説明
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状況に近いと感じていた彼女は、後ろを歩くシンクに声をかけたのだった。
聞かれた彼は即座に彼女に教えてあげる。近くで聞いていた彼も、彼女と同じ事を考えていたのだろう。
彼の言葉を受けて、胸につかえていた靄がはれたように、納得の笑みを溢しながら言葉を紡ぐミルヒ。
そんな2人を微笑ましく眺めるトリル達なのであった。
だが、実はこの話には巧妙な罠が潜んでいたのである。それは――
トリルはナナミに全てを説明していたと言うこと。
と言うよりも、説明していなければミルヒ達に信用されない可能性だってある。
あいにく、彼は『O・HA・NA・SHI』スキル保持者ではないのである。
その為、キチンとナナミに事情を説明して、自分の手の内を晒した状態でお願いをしていたのだった。
ところが、それをナナミが覚え切れなかったのか、面倒だったのか。
きっと信頼していたのだろう。自分達の紹介ならば、細かく説明をしなくとも受け入れてくれるだろう――。
そんな風に、ナナミが肝心な部分を説明していなかったのが、ミルヒを悩ましていた原因なのであった。
「あー、先生の話を聞いて……やっと理解できましたよ」
シンクはトリルに向かい、苦笑いを浮かべてそう告げたのだった。
すると彼は、そのまま遠い方向へと顔を向けると――
「ナナミから聞かされた時には、なんで先生が異世界の人達と知り合いなのかが、全然わからなかったんですから……」
「あはははは……」
頬を膨らましながら、そんなことを口走っていた。
そんな彼の言葉に苦笑いを奏でるトリル。すると、横にいたミルヒが2人を見つめて微笑むと、トリルに声をかけるのだった。
「トリルさんは、どうやってナナミさんがフロニャルドに行き来していることを知ったのですか?」
「……そこから伝わっていなかったのですか?」
「はい……まったく」
「あっ、僕も知りたいです! あとベッキーも知りたがっていましたから」
彼女の問いに彼は驚いて問い返していた。しかし苦笑いを浮かべながら肯定する彼女を眺めながら――
ほとんどの情報がないにも関らず、来訪を受け入れられた事実。
それは、国の領主達と勇者達の間に、深くて強固な絆と絶対の信頼がなければ、成立などしないと言うこと。
改めて、シンク達の絶大な信用に驚いていた。
そして遠い空の下、今頃こちらへ向かっているであろうナナミへと最大の感謝をしながら、ナナミとの経緯を話し始めるのであった。
☆★☆
「――ファッ、ファッ……クシュン!」
「おい、ナナミ……大丈夫か?」
「ズズッ……ふぁー、ふん……んんっ。……大丈夫だよ?」
「そうか? ならば良いのだが……風邪ではなかろうな? もしや無理をして――」
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