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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 32
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さん」
 「際どい所で留まってる感は拭えませんが……これも我々の職務ですから」
 「はは。優秀な部下の存在は、幸運以外の何物でもないな」
 マーマレードの小瓶より小さな涙型のガラス瓶に栓をして騎士服の内側へ仕舞った男性も、気安い様子でベルヘンス卿の肩をバシバシ叩いて笑う。
 「……殿下?」
 「ん? お前は「お父様」で良いんだぞ、ミートリッテ」
 流れる涙をそのままに唖然と立ち尽くし……ベルヘンス卿を見て、アーレストを見て、最後に目の前の男性を見る。
 そんなミートリッテの前髪をぐしゃぐしゃ掻き回す男性の若葉色の虹彩が、楽しげに細まった。
 (殿下。アルスエルナの王室。貴族の青年が命令を受け取り、敬称や敬語を使う相手。ベルヘンス卿を部下と称したこの人は、まさか……)

 「あ、貴方……アルスエルナの王子様ぁあ!?」

 
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